引越しや家の新築に際して、「プロパンガスの契約書に形式的にサインしようとしている」という方もいらっしゃるのではないでしょうか 。あるいは、毎月のガス代が高いと感じ、契約の見直しを検討している方も多いかもしれません。
プロパンガスは「自由料金制」のため、契約内容や会社選びによって、支払う料金に大きな差が生まれます。契約内容を正しく理解していないと、都市ガスの2倍以上の料金になったり、解約時に高額な費用を請求されたりするケースも少なくありません。
本記事では、新規契約(引越し)・乗り換え・解約のシーン別に、契約前に必ず確認すべきポイントと、トラブルを回避するための知識を解説します。
この記事でわかること
- 【物件別】契約前に確認すべきチェックポイント:「賃貸への入居」「持ち家の新築・購入」という2つのシーン別に、契約前に必ず確認しておくべき項目や注意点が分かります。
- 契約書で絶対に見落としてはいけない「4つの項目」:後々の高額請求を防ぐために不可欠な「三部料金制」と「設備料金」の読み方が分かります。
- よくある疑問やトラブルへの対処法:「訪問営業の安い価格は信用できるか?」「クーリングオフは可能か?」「解約時の引き止めにはどう対応すべきか?」といった疑問への回答が得られます。
- 適正価格で契約するための具体的なアクション:損をしないために、契約前にどのような行動(相見積もりなど)を取ればよいかが分かります。
【物件別】契約前に絶対に行うべき確認アクション

契約手続きの際、賃貸物件に入居する場合と、持ち家(戸建)で契約する場合とでは、確認すべきポイントが異なります。
賃貸物件(アパート・マンション)へ引越しの場合
賃貸物件では、原則として入居者がガス会社を選ぶことはできませんが、契約内容を事前に把握し、納得した上で入居することは可能です。
入居申し込み前の「料金確認」:不動産仲介会社に対し、「この物件のガス料金表を見せてください」と依頼しましょう。2024年7月の法改正により、不動産会社やガス会社は、入居希望者に対してLPガス料金の情報を提供する義務(または努力義務)を負っています。家賃が安くてもガス代が極端に高い物件を避けるために不可欠な確認です。
「設備料金」が含まれていないかチェック:提示された料金表に「設備料金」という項目があるか、ある場合はその内容を確認します。これまで家賃に含まれるべきエアコンやWi-Fi、ドアホンの費用をガス代に上乗せすることが横行していましたが、現在は原則禁止されています。もしガス代として請求される契約になっている場合、その費用が適正か(ガス機器に関するものか)を確認する必要があります。
保証金(預り金)の有無:入居時に「保証金(1万円程度)」が必要か確認します。未払い防止のために預けるお金で、退去時には全額返金されますが、引越し当日に現金を用意していないと開栓できない場合があります。必ず「預り証」を受け取り、退去時まで大切に保管してください。
持ち家(戸建・購入・リフォーム)の場合
持ち家の場合、ガス会社を自由に選べますが、初期費用の契約形態に大きな変化があります。
「ガス契約」と「設備契約」の分離:2025年4月以降、配管や給湯器をガス会社に用意してもらう場合、従来の「無償貸与(ガス代に上乗せ)」は禁止され、「設備貸与契約(リース契約)」や「売買契約」を別途結ぶことになります。ガス供給契約書とは別に、設備の支払いに関する契約書があるか確認してください。「ガス代に含まれています」という説明は、新ルール違反の可能性があります。
相見積もりの実施:1社の提案だけで決めず、複数の会社から見積もりを取り、「ガス単価」と「設備費用」のトータルコストを比較します。エネピでは、厳選された優良ガス会社の比較や、無料の料金シミュレーションを提供しています。専門スタッフによるサポートも行っていますので、契約や料金に関する不安がある方は、ぜひ一度相談してみてください。
契約書の「ここ」を見る! 必須チェックリスト

契約書や重要事項説明書にサインをする前に、以下の項目が明記されているか必ず確認してください。口頭での説明と書面の内容が違うトラブルが多発しています。
- 料金の仕組みは「三部料金制」になっているか?
- 「設備料金」の内訳は具体的か?
- 契約解除時の「違約金・精算金」の条件
- 料金の「値上げ」に関する条項
料金の仕組みは「三部料金制」になっているか?
従来の「基本料金+従量料金」の二部料金制から、現在は「基本料金+従量料金+設備料金」の三部料金制への移行が進んでいます。
確認点: 請求内訳に「設備料金」という項目があるか。
なぜ見るのか?: 「従量料金(ガスの単価)」の中に、こっそり設備代が上乗せされていないかを見極めるためです。設備代が別枠で表示されていれば、ガスそのものの単価が高いか安いかを正しく判断できます。
「設備料金」の内訳は具体的か?
確認点: 設備料金として請求される金額が、具体的に何の設備(給湯器、配管など)に対するものか、いつ支払いが終わるのかが記載されているか。
注意: 「エアコン」「テレビ」「Wi-Fi」などの費用が設備料金に含まれていないか注意してください。これらはガス消費と関係がないため、ガス代として請求することは原則禁止されています(既存契約の経過措置を除く)。
契約解除時の「違約金・精算金」の条件
確認点:
- 「契約期間は何年か?」(10年〜15年など長期の場合が多い)
- 「途中解約した場合、違約金はいくらか?」
- 「設備の残存価格(残債)の計算式は明記されているか?」
注意: 「解約時は言い値で請求する」といった曖昧な記述ではなく、経過年数ごとの精算額が分かる表や計算式があるか確認しましょう。
料金の「値上げ」に関する条項
確認点: 「経済情勢の変化等により値上げすることができる」という条項の近くに、「事前に通知を行う」「消費者への周知方法」についての記載があるか。
注意: 「通知なしで値上げできる」あるいは「検針票への記載のみで通知とみなす」といった、消費者が見落としやすい条件になっていないかチェックが必要です。
解約・切り替えの手順

現在のガス会社から他社へ切り替える、あるいは引越しで解約する場合の手順は以下の通りです。
1. 解約の連絡: 引越しの場合は1週間前までを目安に、現在のガス会社へ連絡します。
2. 解約清算の確認: 最終月のガス代と、もし契約期間中の解約であれば「設備残存代金(違約金)」の請求がないか確認します。
3. 保証金の返還: 入居時に預けた保証金がある場合は、預り証を用意し、返金手続きを行います。預り証を紛失していると返金されないトラブルがあるため、さがしておきましょう。
4. 閉栓の立ち会い: 退去時は、係員が閉栓作業を行います。その場で精算する場合もあります。
プロパンガス契約は、一度結ぶと長期間の付き合いになることが一般的です。「面倒だから」と内容を見ずにサインするのではなく、「設備料金の内訳」と「解約時の条件」の2点だけでも確認することで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
【注意】訪問販売・勧誘トラブルへの対策

「ガス代が安くなります」と訪問してくる営業マンや、電話勧誘には注意が必要です。以下のようなセールストークには即決せず、冷静に対応しましょう。
典型的な勧誘トークと対策:
| 営業マンの言葉 | その裏側・対策 |
|---|---|
| 「今のガス会社は地域で一番高いですよ」 | 不安を煽る常套句です。根拠のない誹謗中傷であるケースが多いため、鵜呑みにしないようにしましょう。 |
| 「検針票(請求書)を見せてください」 | 個人情報や顧客番号を盗み見ようとしています。絶対に見せないでください。 勝手に切り替え手続きを進められるリスクがあります。 |
| 「この地域を一斉に回っています」 | あたかも公的な工事や点検のように装いますが、単なる一企業の営業活動です。「結構です」とはっきり断りましょう。 |
| 「今より月〇〇〇〇円安くなります」 | 最初だけ極端に安い「売り込み価格」を提示している可能性があります。契約後に値上げされるリスクがあるため、「その価格は永続するのか?」を書面で確認しましょう。 |
「点検商法」に注意:「無料で点検します」「法律で義務付けられた点検です」と言って訪問し、点検後に「給湯器が壊れかけている」「屋根が危ない」などと不安を煽って高額な契約を迫る手口が増えています。
【対策】契約中のガス会社以外の訪問点検は、その場でドアを開けず、まずは契約中のガス会社に電話して事実確認を行ってください。
契約してしまった後の「クーリング・オフ」:もし訪問販売や電話勧誘で不本意な契約をしてしまっても、以下の条件であれば無条件で解約(クーリング・オフ)が可能です。
- 期間: 契約書面を受け取った日から8日以内。
- 方法: ハガキなどの書面、または電子メールやウェブサイトのフォーム(電磁的記録)で通知します。
- 注意: 自ら店舗に出向いて契約した場合や、Webサイトから自発的に申し込んだ場合はクーリング・オフの対象外となることがあるため、契約経路に注意してください。
よくある疑問とトラブル回避Q&A

プロパンガス契約に関して、よくある疑問をまとめました。これまでの内容と重複する部分もありますが、改めて整理します。
Q. 訪問営業が来て「安くする」と言われましたが、信用してよいでしょうか?
訪問営業で提示される価格は、契約を取るための極端に安い「売り込み価格」である可能性があります。契約後しばらくしてから徐々に値上げされるケースもあるため、即決せずに「料金保証はあるか」「長期的にその価格が維持されるか」を確認し、他社とも比較検討することをおすすめします。
Q. クーリングオフはできますか?
訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合は、契約書を受け取った日から8日以内であればクーリングオフが可能です。ただし、自ら店舗に出向いたり、Webサイトから申し込んだりした場合は対象外となることが一般的です。契約経路によって異なるため注意が必要です。
Q. 解約を申し出たら、急に値下げを提案されました!
解約を引き止めるために、一時的な値下げを提案されることがあります。しかし、口頭だけの約束では、ほとぼりが冷めた頃に再び値上げされるリスクも考えられます。もし提案を受ける場合は、その価格が永続的に適用されるのかを書面で確認するとよいでしょう。
まとめ

プロパンガスの契約は、一度結ぶと長く続くものです。後悔しないためにも、契約前の確認を徹底しましょう。
状況別の確認ポイント:
- 賃貸の方:「保証金」の有無と「料金表」を事前に入手して確認する
- 持ち家の方:「無償貸与契約」の期間と、途中解約時の違約金条件を必ずチェックする
- 乗り換え検討の方:現在の料金が適正か診断し、解約金の有無を確認する
- 共通:安すぎる勧誘や「工事費無料」の裏側にある契約条件に注意する
プロパンガスは生活に欠かせないインフラですが、契約内容や会社選びによって家計への負担は大きく変わります。まずはご自宅のガス料金が適正かどうかを確認し、必要であれば信頼できるガス会社への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
エネピでは、物件の種類やガスの使用状況を入力することで、地域のガス会社ごとの料金が一覧で確認できます。また、厳しい審査基準を満たした優良会社のみをご紹介しているので、安心して切り替えていただけます。
