夏に必須のエアコンですが、多くの電力を消費するため、使うのをためらってしまうこともあるかもしれません。実は、エアコンに備わっている「送風」機能を上手に活用することで、電気代を抑えながら快適に過ごすことが可能です。
この記事では、エアコンの送風機能にかかる具体的な電気代、冷房や除湿との違い、そして明日からすぐに実践できる賢い節約術まで、詳しく解説します。
この記事で分かること:
- エアコン「送風」の電気代は、1時間あたり約1円以下と非常に経済的です。
- 送風の電気代が安いのは室外機を動かさず、室内機のファンだけを回しているためです。
- 送風はサーキュレーターとして活用することで、冷暖房効果が高まります。
- 送風には室温を下げる効果はないため、気温や湿度が高い日は冷房を使用するべきです。
エアコン送風の電気代はどれくらい安い?
まずはエアコンの各運転モードが実際にどれだけの電力を消費し、それが電気代としていくらになるのかを正確に把握することから始めましょう。
電気代を計算する上での基本単位は「キロワットアワー (kWh)」です。これは、1kW (1000W) の電力を1時間使用した場合の電力量を示します。本記事では、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価「1kWhあたり31円」を計算の基準として使用します。
それでは、各運転モードを1時間使用した場合の電気代を比較してみましょう。以下の表は、現実的なコスト範囲を示したものです。この数値を把握することが、賢いエアコン活用のために不可欠です。
| 機能 | 概要 | 1時間あたりの電気代(目安) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 送風 | 室内ファンのみを稼働させ、室温を変えずに空気を循環させる | 約0.3円~1.0円 | 空気の循環、換気補助、春・秋の涼風 |
| 冷房 (設定28℃) | 室内の熱を室外に排出し、室温を下げる | 約12円~25円 | 夏場の室温低下 |
| 暖房 (設定20℃) | 外気の熱を取り込み、またはヒーターで室温を上げる | 約15円~46円 | 冬場の室温上昇 |
| 除湿 (弱冷房式) | 弱い冷房運転で空気中の水分を結露させ、湿度を下げる | 約5円~10円 | 湿度が高く、少し室温を下げたい時 |
| 除湿 (再熱式) | 除湿後に空気を温め直し、室温を下げずに湿度を下げる | 約15円~34円 | 梅雨時など肌寒いが湿度を下げたい時 |
送風:圧倒的に低コストで経済的
送風モードの電気代は、1時間あたりわずか約0.3円から1.0円です。これは電力消費の大部分を占める室外機のコンプレッサーを一切動かさず、室内機のファンを回転させるだけの電力しか使用しないためです。その消費電力は一般的な扇風機と同等か、機種によってはそれ以下であり、経済性を最優先する際の選択肢となります。
冷房:状況で大きく変動するコスト
冷房は、設定温度や室内外の温度差によってコストが大きく変動します。例えば、設定温度28℃での安定運転時は1時間あたり約12円から25円が目安です 。しかし、猛暑日に帰宅した直後など、エアコンがフルパワーで稼働する際は最大で 約28.5円に達する一方、室温が安定してからの維持運転では約3.3円まで下がることもあります。
暖房:最も高コストな選択肢
一般的に、暖房はエアコンの機能の中で最も多くの電力を消費します。外気温が低い中で熱を生み出す必要があるため、そのコストは1時間あたり約15円から46円と高額になりがちです。特に外気温が氷点下に近づくと、その負担はさらに増大します。
除湿:2つの方式で異なるコスト
多くの人が「除湿は冷房より安い」という漠然としたイメージを持っているかもしれません。しかし、除湿機能には2つの方式があることを理解する必要があります。
- 弱冷房除湿: これは、その名の通り弱い冷房運転を行うことで空気中の水分を結露させて取り除く方式です。室温も少し下がるため、蒸し暑い日には適しています。電気代は冷房よりやや安く、1時間あたり約5円から10円が目安です 。リモコンに単に「除湿」または「ドライ」と表示されている場合、多くはこの方式です。
- 再熱除湿: こちらは、主に上位モデルに搭載されている機能です。一度空気を冷やして除湿した後、その冷たくなった空気を再び温め直してから室内に戻すため、室温を下げずに湿度だけを下げることができます 。梅雨時の肌寒い日などには非常に快適ですが、この「冷却」と「加熱」という2つのプロセスを同時に行うため、そのコストは 1時間あたり約15円から34円にも達し、冷房はおろか状況によっては暖房よりも高くなることがあるのです。
節約を意識して「除湿」モードを選択したつもりが、無意識に最も高コストな「再熱除湿」を使ってしまい、かえって電気代を押し上げてしまうケースは少なくありません。自宅のエアコンがどちらの方式を採用しているか、あるいは両方を切り替えられるのか、取扱説明書で確認してみてください。
節約につながる送風の効果的な活用法4選!
電気代が安い送風機能ですが、単なる扇風機代わりの使い方だけではもったいないかもしれません。本章では、より電気代を節約できる賢い活用法をご紹介します。
冷暖房との併用でサーキュレーター代わりに
送風機能の真の価値は「空気循環(サーキュレーション)」にあります。暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するという法則は、室内に「温度のムラ」を生み出します。このムラを解消することが、快適性と省エネを両立させるポイントです。
- 冷房時の活用: 冷房によって作られた冷気は、重力に従って床付近に溜まります。このままでは足元だけが冷え、顔周りは涼しくないという状況になりがちです。ここで送風機能を使い、床に沿って風を送ることで、下に溜まった冷気を部屋全体に対流させることができます 。これにより、部屋全体の体感温度が均一に下がり、設定温度を必要以上に下げることなく快適さを得られます。
- 暖房時の活用: 暖房で温められた空気は、天井付近に滞留してしまいます。その結果、設定温度を上げても足元は寒いままという状態に陥ります。この場合、送風機能の風を天井に向けて送ることで、天井に溜まった暖気を押し下げ、部屋全体、特に生活空間である下層部へと循環させることができます。
この空気循環による最大のメリットは、「エアコンの過剰な運転を防ぐ」ことにあります。温度ムラが解消されることで、体感温度が実際の温度設定に近づき、無理なく設定温度を調整できます。
一般的なデータによれば、冷房の設定温度をわずか1℃上げるだけで約13%、暖房の設定温度を1℃下げるだけで約10%の消費電力削減につながるとされています 。送風による空気循環と温度調整の組み合わせは、最も効果的な活用法と言えます。
部屋の換気のサポートに
猛暑日に外出から帰宅すると、締め切られた室内は外気よりもはるかに高温になっていることがあります。この状態でいきなり冷房をONにすると、エアコンは膨大なエネルギーを使ってこの熱気を冷却しようとフル稼働します。
これを避けるため、まずは窓を2ヶ所以上開け、エアコンを「送風」モードで5分から10分運転させましょう。これにより、最小限の電力で室内にこもった熱気を効率的に排出し、冷房運転開始時の負荷を軽減できます。
なお、冷暖房中に換気が必要な場合は、エアコン本体から最も遠い窓を開けるのが鉄則です 。エアコンのすぐ近くの窓を開けてしまうと、取り込んだばかりの外気を直接吸い込んでしまい、設定温度との差を埋めるためにコンプレッサーが余計な仕事を強いられ、エネルギーの無駄遣いにつながります。
春や秋には扇風機として
「冷房をつけるほどではないけれど、少し風が欲しい」と感じる春や秋の季節には、扇風機の代わりとして送風を活用するのがよいでしょう 。エアコンは高い位置から部屋全体に風を送れるため、心地よい空気の流れを作ることができます。
部屋干しの乾燥促進に
雨の日や梅雨の時期には、洗濯物の部屋干しをする機会も増えると思います。洗濯物に向かって送風の風を当てることで、乾燥時間を短縮し、気になる生乾きのニオイを防ぐ効果も期待できます。
使う前に知っておくべき送風機能の注意点
送風機能は便利で経済的ですが、その特性を誤解して使用すると、健康を害したり、エアコン本体にダメージを与えたりする可能性があります。本章では、送風機能を利用する上で絶対に知っておくべき注意点を詳しく解説します。
快適性と健康維持のために
最も重要な注意点は、送風機能には室温を下げる効果が一切ないということです。送風は、あくまで室内の空気を循環させるだけです。真夏の熱帯夜など室温が危険なレベルまで上昇している状況で、電気代を節約したいからと送風運転だけで過ごすことは、熱中症のリスクを高める危険な行為です。
特に、体温調節機能が未熟な乳幼児や高齢者がいる家庭、あるいは就寝中には注意が必要です。気温や湿度が高い日は、無理せず冷房を使用することが健康を守るための絶対条件です。
カビ対策:「内部クリーン」対「送風」
冷房運転後のエアコン内部は、熱交換器が結露によって濡れている状態です。この湿った環境は、カビや雑菌にとって絶好の繁殖場所となります。ここで犯しがちな間違いが、冷房停止直後に「送風」運転に切り替えて内部を乾かそうとすることです。
単純な「送風」運転は、内部の湿った空気をそのまま循環させるだけなので、湿気が内部に留まり、かえってカビの繁殖を助長する可能性があります。一方、多くのエアコンに搭載されている「内部クリーン」や「乾燥」といった機能は、カビ対策のために特別に設計された乾燥サイクルです。
この機能は、単にファンを回すだけでなく、多くの場合、微弱な暖房運転を組み合わせることで内部を積極的に加熱乾燥させ、カビが繁殖しにくい環境を作り出します 。パナソニックの「ナノイーX」やシャープの「プラズマクラスター」のように、イオンを発生させてカビ菌の抑制や脱臭効果を高める高機能なモデルも存在します。
この「内部クリーン」機能は、冷房や暖房の停止後に自動で開始され、完了までに約60分から120分ほどかかります 。その間の電気代は、メーカーや機種により異なりますが、 1回あたり約1円から5円程度が一般的です 。この僅かなコストは、エアコンの寿命を延ばし、室内の空気質を清潔に保つために、必要な負担と考えるべきです。
なお、「内部クリーン」機能は、あくまでカビの発生を抑制するための予防策であり、すでに発生してしまったカビを除去する能力はありません 。もしエアコンからカビ臭がするようになった場合は、専門業者による分解洗浄が必要です。
電気代節約の根本的な課題を解説しよう!
これまで、エアコンの効率的な使い方や冷暖房の工夫について詳しく説明してきました。これらを意識し日々実践すれば、消費電力量そのものを大幅に削減できるでしょう。しかし、より根本的な解決を目指すのならば、最後に手をつけるべき課題があります。それが、家庭の電気代の基盤である「電力料金プラン」の見直しです。
日々の節約努力を積み重ねても、支払う電気代が思ったほど下がらない場合、その原因は「電気の単価」自体が割高である可能性が考えられます。日本の電力市場は自由化されており、消費者は従来の地域電力会社だけでなく、「新電力」と呼ばれる多くの事業者の中から、自身のライフスタイルに最も合った電力会社や料金プランを自由に選ぶことができます。
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※3~4人暮らしの場合の金額です
まとめ
今回はエアコンの「送風」機能という観点から、家庭における電力消費を最適化するための知識や方法について解説してきました。最後に、重要なポイントを改めて整理します。
- 送風機能の役割を理解する: エアコンにおいて最も低コストである「送風」は、冷暖房と併用して空気を循環させるサーキュレーターとして活用することで、特にその価値を発揮します。
- エアコンの運用を最適化する: 夏場は熱を外へ逃がすために、部屋を一度換気してから冷房を行うことで、エアコンの無駄な稼働を抑制できます。これは、単に設定温度に頼るよりもはるかに効率的な運用方法です。
- 最適な機能でリスクを回避する: 高コストな「再熱除湿」の存在や、カビ防止に適した「内部クリーン」機能の重要性を知ることは、家計と健康の両方を守るための重要な知識です。
- 根本的な原因を見直す: 日々の節約努力を最大限に活かすためには、電力会社や料金プランといった電気の供給条件を見直すアプローチが不可欠です。
電気代節約は、これら①機能の正しい理解②賢い利用習慣の実践③最適な供給元の選択という3つのアプローチを組み合わせることで達成されます。まずは、本記事で紹介した送風機能の活用法を、無理のない範囲で日々の生活に取り入れてみてください。そして、その努力をより大きな成果に結びつけるために、ご自身の家庭に最適な電力プランを探してみてください。
