毎月の電気代の請求額を見て、「今月も高い…」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に四国エリアにお住まいの方の中には、「四国電力の料金は、他の地域に比べて割高なのでは?」という疑問を持つ方も少なくないようです。
この記事では、エネルギーの専門家の視点から、四国電力の電気料金が高いとされる背景やその原因を詳しく解説します。 さらに、ご家庭の電気料金を安くするために今すぐ実践できる「3つのステップ」をご紹介します。
この記事から分かること
- 四国電力の電気料金が他の電力会社と比較して高くなることがあるのか。
- 電気料金が高くなる主な3つの原因(全国共通の燃料費、電力会社の事情、各家庭の契約プランや使い方)。
- 電気代を安くするために、ご家庭で実践できる具体的な3つのステップ(現状把握、プラン見直し、電力会社の切り替え)。
- 電力会社を切り替える際のメリットや、事前に確認すべき注意点。
- 多数の電力会社から自分に合ったプランを効率的に探すための、料金比較サービスの活用法。
四国電力の電気料金は本当に高い?
結論から言うと、料金プランや電気の使用状況によっては、四国電力の料金が他の電力会社の選択肢に比べて割高になるケースが見られます。
日本の電気料金は全国一律ではなく、電力会社ごとに設定が異なります。特に、2016年の電力自由化以降に参入した「新電力」と呼ばれる会社は、独自の料金プランを提供しており、従来の電力会社よりも安価な料金設定を強みとしている場合があります。
ただし、オール電化プランなど、特定のライフスタイルにおいては四国電力のプランが最適である可能性も考えられます。そのため、一方的に「高い」と判断するのではなく、なぜ料金が高くなっているのか、その構造を理解することが重要です。
電気料金が高くなる3つの原因
電気料金が高くなる背景には、個人の努力だけでは変えられない社会的な要因と、家庭内で見直せる要因があります。まずはこの違いを理解することが重要です。
全国共通:燃料価格の変動と国の制度
毎月の電気料金は、主に以下の4つの要素で構成されています。
- 基本料金:契約プランごとに固定でかかる料金
- 電力量料金:電気の使用量に応じてかかる料金
- 燃料費調整額:発電に使う燃料(LNGや石炭など)の輸入価格の変動を料金に反映させるもの
- 再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金):再生可能エネルギーを普及させるために、電気を使うすべての方が負担する料金
近年、世界情勢の不安定化や円安の影響で燃料の輸入価格が大きく変動しており、「燃料費調整額」が高騰する傾向にあります。これは全国共通の課題であり、電気料金が上がっている大きな要因の一つと考えられます。
さらに重要な点は、四国電力が2022年11月分から、大半の自由料金プランにおいて、この燃料費調整額の上限を撤廃したことです。もともと、国の規制が適用される「従量電灯A」などの規制料金プランには、燃料価格が異常高騰した際に消費者を保護するための上限が設けられています。
この上限は、基準燃料価格の1.5倍までと定められており、それを超えるコストは電力会社が負担する必要があります。しかし、近年の世界的な燃料価格高騰により、四国電力はこの上限を超過するコストとして約80億円を自社で負担する事態に陥りました。
この財務的負担を解消するため、同社は規制の対象外である自由料金プランについて、この上限を取り払うという経営判断を下します。これにより、自由料金プランの契約者は燃料価格の上昇リスクを直接的に負うことになったのです。これが、多くの消費者が「四国電力の電気代は高い」と感じる直接的な背景の一つとなっています。
電力会社別:電源構成による影響
電力会社がどのような方法で電気を作っているか(電源構成)も、料金に影響を与えます。例えば、火力発電の割合が高い電力会社は、燃料価格の変動による影響を受けやすくなります。各電力会社はそれぞれ異なる電源構成を持っており、その違いが料金設定の差として現れることがあります。
四国電力の電源構成は、原子力発電を基幹電源と位置づけつつも、依然として火力発電が大きな割合を占めています。統合報告書などによると、火力発電の比率が60%近くに達し、そのうち石炭が約29%、LNG(液化天然ガス)などが約6%を占めるという分析もあります。さらに他電力会社との比較によって、同社の電源構成の特徴は一層明確になります。特に地理的に近く、同様に原子力発電所を有する九州電力との比較は分かりやすいでしょう。
| 電源 | 四国電力 | 九州電力 | 関西電力 |
|---|---|---|---|
| 火力 | 約59%(LNG:6%, 石炭:29%等) | 約49%(LNG:11%, 石炭:29%等) | 約43%(LNG:23%, 石炭:17%等) |
| 原子力 | 約16-20% | 約23-35% | 約21-28% |
| 再生可能エネルギー | 約26% | 約22% | 約12% |
| その他 | 約9% | 約6% | 約17% |
※数値は概算値であり年度や報告書によって若干の差異があります
この比較から読み取れるのは、九州電力が四国電力に比べて火力発電への依存度が低く、そのぶん安定的に低コストで稼働する原子力発電の比率が高いということです。2023年に全国の大手電力が一斉に大幅な料金値上げに踏み切った際、九州電力が値上げ幅を極めて小規模に抑制できた背景には、この電源構成の違いがあったと指摘されています。
対照的に、四国電力は火力発電への依存度が高いため、燃料価格の変動が経営と料金に与える影響がより大きくなります。これが、四国エリアの消費者が直面する「電気料金の高さ」を生み出す一因となっています。
家庭別:料金プランと電気の使い方
社会的な要因だけでなく、ご家庭内の契約内容や電気の使い方が、料金を押し上げている可能性も十分に考えられます。
- ライフスタイルに合わない料金プランを契約している
- 日中の電気使用量が多いのに、夜間割引プランに入っている
- 古い家電を長年使用しており、消費電力が大きくなっている
上記に心当たりがある場合、契約や使い方を見直すことで、料金を大きく削減できる可能性があります。
実践編:電気代を安くする3つのステップ
それでは、具体的に電気代を安くするための方法を3つのステップで見ていきましょう。
ステップ1:まずは現状把握から!「検針票」をチェック
電気代を見直すには、まずご自身の契約内容や使用状況を正確に把握することが重要です。 毎月届く「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」や、会員向けWebサービス「よんでんコンシェルジュ」で、以下の項目を確認してみましょう。
- 契約中の料金プラン名
- 毎月の電気使用量(kWh)
- 燃料費調整額がいくらか
これらのデータを把握することで、自身の電力消費パターンが見え、どの部分に削減の余地があるのかが見えてきます。
ステップ2:契約内容が最適か「料金プラン」を見直す
現在の電気の使い方と契約プランが合っていない場合、プランを見直すだけで料金が安くなる可能性があります。
例えば、四国電力では時間帯によって料金単価が変わるプランなどが提供されています。日中は仕事でほとんど家にいない、あるいはオール電化住宅であるなど、ご家庭の状況に合わせて最適なプランを検討してみましょう。
プランのミスマッチは、気づかぬうちに毎月の料金を押し上げている可能性があります。プラン変更だけで年間数千円から数万円の節約につながるケースも少なくありません。
ステップ3:根本的な解決策「電力会社の切り替え」を検討する
プラン見直しでも料金に満足できない場合、電力会社そのものを切り替えるという選択肢があります。2016年の電力自由化以降、多くの「新電力」が市場に参入し、消費者は自身の価値観やライフスタイルに合わせて電力会社を自由に選べるようになりました。
ただ、「どの電力会社が自分に合っているかわからない」「比較するのが面倒」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような場合は、複数の電力会社の料金を一度に比較できるサービスを活用することをおすすめします。
エネピの「料金比較サービス」は、お住まいのエリアや現在の電気の使い方に関する簡単な情報をもとに、最適な電力会社や料金プランを比較・診断するサービスを提供しています。中立的な立場で複数の選択肢を提示するため、ご自身にぴったりのプランを見つける手助けになります。ぜひ一度、料金シミュレーションを利用してみてください。
四国電力の主な料金プランと特徴
料金を見直す上で、現在契約している電力会社にどのようなプランがあるかを知ることが重要です。ここでは四国電力の代表的な料金プランをご紹介します。
従量電灯A(基本的なプラン)
最も多くの家庭で契約されている標準的なプランです。電気の使用量に応じて、料金単価が3段階で高くなるのが特徴です。
- 第1段階(〜120kWh): 生活に最低限必要な使用量を想定した、最も安価な単価。
- 第2段階(120kWh超〜300kWh): 平均的な使用量に対応する中間的な単価。
- 第3段階(300kWh超): それ以上の使用量に対する、割高な単価。
このプランは、昼夜を問わず電気を使用する家庭や、在宅時間が不規則で特定の時間帯に電力消費を集中させることが難しい家庭に向いています。
おトクeプラン(使用量が多い家庭向けプラン)
「おトクeプラン」は、電気の使用量が多い家庭ほどメリットが大きくなるように設計されたプランです。料金構造は「従量電灯A」と似ていますが、月間300kWhを超える部分の電力量料金単価が割安に設定されているのが最大の特徴です。
特典:
- ありがとう割引: 契約を1年間継続するごとに、翌月の電気料金から1,056円が割引される。
- よんでんポイント: 毎月の電気料金200円につき1ポイントが付与され、他社ポイントや四国の特産品と交換できる。
注意点: このプランは自由料金プランに分類されるため、燃料費調整額に上限が設定されていません。燃料価格が著しく高騰した際には、「従量電灯A」よりも料金が高くなるリスクがある点を理解しておく必要があります。
でんかeプラン / でんかeマンションプラン(オール電化住宅向けプラン)
これらのプランは、電気給湯機(エコキュートなど)やIHクッキングヒーターを設置しているオール電化住宅専用の料金プランです。戸建て住宅向けが「でんかeプラン」、マンションなどの集合住宅(総戸数3戸以上)向けが「でんかeマンションプラン」となります。
料金体系: 平日昼間(9:00〜23:00)と、それ以外の夜間・休日で料金単価が分かれており、夜間・休日の単価が割安に設定されている。
割引制度:
- IH割: IHクッキングヒーターの設置で電気料金が5%割引。
- エコキュート割: エコキュート等の設置で電気料金が5%割引。
- でんか割IHとエコキュート等を両方設置している場合、割引率が10%になる(IH割・エコキュート割との重複適用はない)。
注意点: このプランも自由料金プランのため、燃料費調整額に上限がない。
昼トクeプラン(昼間エコキュート利用者向けプラン)
2024年10月に導入された新しいプランで、主に昼間にお湯を沸かすタイプのヒートポンプ給湯器「おひさまエコキュート」を設置している家庭が対象となります。近年、太陽光発電の普及により電力が余りがちな春や秋の昼間に電力需要をシフトさせ、再生可能エネルギーを有効活用することを目的としています。
料金体系:
- 時間帯: 昼間(9:00~15:00)と夜間(15:00~翌9:00)に分かれている。
- 季節別単価: 春(3~6月)と秋(10~11月)の昼間時間帯の料金単価が最も安く設定されているのが特徴。
加入条件: 「おひさまエコキュート」または同等の機能を持つ給湯器を設置していることが条件となる。
注意点: このプランも自由料金プランのため、燃料費調整額に上限がない。
このように、四国電力には複数の料金プランがあります。ご自身のライフスタイルと合わないプランを選んでしまうと、かえって電気代が高くなることもあります。検針票でご自身の電気の使い方(時間帯、使用量)を確認し、プランが合っているか検討してみてください。
料金シミュレーション:他社プランとの比較
ここでは実際の料金プランを基に、代表的な2つの家庭モデルにおける具体的な料金シミュレーションを行います。
モデル①一般的なご家庭の場合:
| 電力会社・プラン | 200kWh/月 | 300kWh/月 | 500kWh/月 |
|---|---|---|---|
| 四国電力 従量電灯A | 約6,797円 | 約10,524円 | 約18,000円 |
| Looopでんき スマートタイムONE | 約6,200円 | 約9,300円 | 約15,500円 |
| シン・エナジー きほんプラン | 約4,615円 | 約7,309円 | 約12,763円 |
※各社の料金単価 に基づく試算であり、燃料費調整額や再エネ賦課金は含んでいないため、あくまで料金構造の比較です
このシミュレーションが示す通り、標準的な家庭(特に電力使用量が多い家庭)においては、新電力への切り替えが大幅なコスト削減につながる可能性があります。
モデル②オール電化住宅の場合:
| 電力会社・プラン | 基本料金 | 電力量料金(昼/夜) | 合計(目安) |
|---|---|---|---|
| 四国電力 時間帯別eプラン | 1,395.90円 | 昼:5,032.5円 夜:9,026.5円 | 約15,455円 |
| 新電力A (一般的なフラット料金プラン) | 0円 | 昼夜均一単価 (仮に31円/kWhと設定) | 約15,500円 |
※同様
一方、オール電化住宅のように夜間の電気使用量が多いご家庭では、四国電力の対象プランがより安くなる可能性が高いです。
ちなみに、多くの新電力事業者が、採算性の問題からオール電化専用プランの提供を停止、あるいは縮小しているという市場の現実があります。したがって、オール電化住宅で切り替えを検討する場合は、極めて慎重なシミュレーションが必要となります。
まとめ
今回は、四国電力の電気料金が高いと感じる原因と、具体的な解決策について解説しました。
今回の要点:
- 電気料金の高騰は、世界的な燃料価格の上昇と、四国電力の火力発電への高い依存度という2つの要因が重なった結果である。
- コスト削減の鍵は、自身のライフスタイルと電力使用パターンを正確に把握し、それに最も合致した料金プラン(それが四国電力内のものであれ、新電力のものであれ)を選択することにある。
- 新電力への切り替えは、多くの標準的な家庭にとって有効な選択肢であるが、オール電化住宅の場合は必ずしもそうではない。メリットとリスクを慎重に比較検討する必要がある。
以下の3つのプロファイルに基づき、分類することができます。
- 標準的な電力ユーザー向け: 電力使用量が平均以上(月300kWh〜)で、特定の時間帯に消費が偏っていない場合、新電力への切り替えが最も高い確率で大幅な節約につながります。
- オール電化住宅ユーザー向け: エコキュートなどを利用し、夜間の電力消費量が全体の大部分を占める場合、四国電力の「各種eプラン」を選択することが最も経済的である可能性が高いです。
- リスク回避型ユーザー向け: 価格の安さよりも、予測可能性と安定性を重視する場合、燃料費調整額に上限が設定されている四国電力の規制料金プラン「従量電灯A」に留まるのが合理的でしょう。これは最安値ではないかもしれませんが、将来的な燃料価格の異常高騰に対する保険として機能し、請求額の急激な上昇リスクを一定程度抑制できます。
電気は日々の生活に欠かせないインフラです。料金が高いと感じた時は、その背後にある仕組みを理解することが重要です。そして、データに基づいて自身の状況に最適な対策を検討してください。本記事が、そのための一助となれば幸いです。
