家庭で用いられるガスには種類があります。プロパンガス・LPガス・都市ガスなど、名前は聞いたことがあっても違いが説明できる人はあまり多くないかもしれません。
そこで今回はプロパンガス・LPガス・都市ガスを比較し、それぞれの特徴について解説します。さらに、高いと言われるプロパンガスの料金をぐっと抑える方法も紹介します。
プロパンガスとLPガスの違い
プロパンガスとは液化石油ガスのことを指します。液化石油ガスはプロパン・ブタンなどの天然ガスを圧縮し、常温で液化できる状態にしたガス燃料です。液化石油ガスの英語表記は「liquefied petroleum gas」なので、頭文字をとって「LPガス」または「LPG」と表記されます。
つまり呼び方は異なりますが、プロパンガスとLPガスは同じガスの種類を指しているのです。ただし、厳密には主原料がプロパンの場合はプロパンガス、ブタンの場合はブタンガスと区分されるため、すべてのLPガスがプロパンガスというわけではありません。
ちなみにプロパンガスの用途については、日本ではタクシーの燃料や火力発電の燃料などに使われたり、家庭においては給湯器やガスコンロに使われたりしています。
プロパンガス(LPガス)と都市ガスの違い
プロパンガス関連の質問で多いのが「都市ガスとの違い」です。今回は主原料・発熱量・燃焼範囲・普及率・料金制度の5つの観点から、プロパンガスと都市ガスの違いを説明します。
都市ガス | プロパンガス | |
---|---|---|
主原料 ※1 |
メタンを主成分とする 液化天然ガス(LNG) |
プロパン・ブタンを主成分とする 液化石油ガス(LPG) |
発熱量 ※2 |
10,750Kcal/㎥ | 24,000Kcal/㎥ |
燃焼範囲 ※3 |
5.0~15.0% | 2.1~9.5% |
普及率 ※4 |
50~60% | 約50% |
料金制度 ※5 |
公共料金 | 自由料金 |
出典:
※1 日本ガス協会
※2 東京ガス/都市ガスの種類・熱量・圧力・成分
経済産業省エネルギー庁/標準発熱量・炭素排出係数(総合エネルギー統計)
※3 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
※4 日本ガス協会
日本LPガス協会
※5 消費者庁
以下で、それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
プロパンガス(LPガス)と都市ガスの違い:発熱量
プロパンガスは都市ガスより発熱量が2倍くらい高いので、同じ体積で2倍の量を温めることができます。ただし、実際には都市ガスのコンロはプロパンガスのコンロよりガスの量が多く出るように設計されているため、 どちらの場合でもあたための時間に差はありません。
プロパンガス(LPガス)と都市ガスの違い:使用機器
先述の通り、プロパンガスと都市ガスは熱量が違うので、ガス機器は対応するガスの種類ごとに、一度に出るガスの量が異なります。このことから、プロパンガス用のガス機器と都市ガス用のガス機器は互換性がありません。もし都市ガスからプロパンガス、あるいはその逆で、引越し先のガスの種類が変わってしまう場合は、ガス機器も買い換える必要があります。
ただし、ガス機器によっては、対応するガスの種類以外のガスに対応させるための調整部品を販売している場合があるので一度確認してみてください。一般にガス機器は、品番の書いてあるラベルに「都市ガス(天然ガス、12A13A)用」「LPガス(プロパンガス、LPG)用」などの対応するガスの名称が書かれています。そちらを確認の上、メーカーに問い合わせるとよいでしょう。
なお費用については、調整部品が5,000~7,000円、そこに作業費用と出張代金などが加算されて15,000〜20,000円ほどになるケースが多いです。
プロパンガス(LPガス)と都市ガスの違い:燃焼範囲
燃焼範囲とは、空気中にガスがどれくらいあると爆発や燃焼を起こしてしまうかを表す濃度の量を指します。
表のデータについて解説すると、プロパンガスは都市ガスの半分ほどの量で爆発や燃焼を引き起こしてしまう危険性があるということになります。そのため、現在プロパンガスを使われている方は、都市ガスを使われている方以上にガス漏れには気を付けるべきです。
ただ、プロパンガスは危険であることをガス会社や国も十分に理解した上で事故件数の低下に努めているため、法律でも点検期間などがしっかりと定めらており、非常に安全性が高いともいえます。ちなみに、2022年に起こったプロパンガスの事故は261件(死傷者は0名)※で、これは全国2,400万世帯のプロパンガス利用世帯のうち0.001%という非常に低い割合です。
プロパンガス(LPガス)と都市ガスの違い:普及率
都市ガスはガス管などを通じて届くのに対して、プロパンガスはガスボンベで配送されます。
都市ガスはガス導管を引かないといけないので、都心では普及率が高く、地方では普及率が低い傾向にあります。実際、都市ガスは日本の国土約6%にしか配管が通っていません。
それに対して、プロパンガスはガス会社の営業所の配送エリア内であればどこでも対応できるので、地方のエネルギー源は依然としてプロパンガスが主流です。
プロパンガスと都市ガスの違い:料金制度
都市ガスは公共料金にあたるので、水道料金や電気料金などと同じく、公共料金に通常用いられる「総括原価方式」という料金制度を採用しています。
総括原価方式
事業が効率的に行われた場合に要する総費用に適正な事業報酬(利潤)を加えた総括原価が総収入と見合うように料金を設定すること。
出典:デジタル大辞泉
要するに都市ガスには料金設定に一定の基準が存在するのに対し、プロパンガスには料金設定の縛りがありません。そのため、プロパンガス業界はガス会社ごとの料金に大きな開きがあるのです。「ガス会社が変わったら同じ使用量でもガス料金がずいぶん安くなった」ということも珍しくはありません。
プロパンガス(LPガス)の料金制度
プロパンガスの料金制度は、以下の3つに分かれます。
- 二部料金制
- 三部料金制
- 最低責任使用料金制
二部料金制は、基本料金と従量料金の2つの要素で構成されます。基本料金は使用量に関わらず固定で、従量料金は実際の使用量に応じて変動します。
三部料金制は、基本料金・従量料金・設備料金の3つの要素で構成されます。設備料金にはガス器具のレンタル費用などが含まれます。
最低責任使用料金制は、一定量のガス使用を前提とした料金制度です。実際の使用量が最低責任使用量を下回っても、最低責任使用量分の料金が課金されます。
プロパンガス会社は、これらの料金制度を自由に採用することができます。
プロパンガス(LPガス)の従量料金の計算方法
プロパンガスの従量料金には、スライド型・原料費調整型・固定型の3つの計算方法があります。
スライド型は、ガスの使用量に応じて従量料金の単価が変動する方式です。一般的に使用量が増えるほど単価が安くなる仕組みになっています。
原料費調整型は、プロパンガスの原料費の変動に応じて毎月従量単価が変動する方式です。国際的な原油価格やプロパンガス輸入価格の変動を反映させるため、月ごとに単価が変わります。
固定型は、使用量に関わらず従量料金の単価が一定の方式です。最もシンプルな計算方法で、使用量に単一の単価を掛けるだけで従量料金が算出されます。
プロパンガス(LPガス)の料金は高い!?
プロパンガスについて、「料金が高い!」という印象をお持ちの方は多いでしょう。特にガスの使用量が増える冬季は、「請求書を見てびっくりした!」という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
では、実際にプロパンガスの料金がどれくらい高いのか、都市ガスの料金と比較して確かめてみましょう。
出典:プロパンガス消費者センター/都市ガスとプロパンガスの4つの違い
このように、プロパガンガスと都市ガスでは料金に1.5倍以上の開きがあり、一月あたりの平均料金を比べると5,000円以上の差分があります。
さて、プロパンガスの料金はなぜこれほど高いのか。以下でその理由を説明していきます。
プロパンガス(LPガス)料金の内訳は?
まずはプロパンガス料金の仕組みから見ていきましょう。
このように、プロパンガス料金は基本料金と従量料金で構成されるのが一般的です。
基本料金は、ガスの使用量にかかわらず毎月一定の金額です。ガスボンベ配送費用、検針費用、管理費用などにかかる経費とされています。
従量料金は、毎月のガスの使用量に応じて決められる金額です。1㎥あたりの従量単価が決められており、ガスの使用量に従量単価を掛けて従量料金が求められます。
なぜプロパンガス(LPガス)料金は高いの?
なぜプロパンガスは都市ガスよりも料金が高くなってしまうか。その理由は、両者の2つの違いにあります。
理由1:供給設備の違い
都市ガスは、供給元からガス導管を通してそれぞれの家庭に供給されています。一方プロバンガスは、家庭ごとに設置したガスボンベから供給されています。そのためプロパンガスは家庭ごとに運搬などの人件費がかかり、そのぶん料金が高くなってしまうのです。
理由2:料金設定の違い
プロパンガスは都市ガスと違い自由料金設定を採用しているため、なかには適正料金よりも大幅に高い料金設定のガス会社も存在します。そして、そのことに気が付かずに契約しているご家庭も少なくないため、プロパンガスの平均料金はなかなか下がらないのです。
プロパンガス(LPガス)の料金を安くする方法
これまで説明してきたとおり、プロパンガスは料金が高いです。しかし、実は料金を安くできる妙策があるのです。以下でその内容と手順を紹介します。
プロパンガス(LPガス)料金の平均はいくら?
一般にプロパンガス料金は高いと言われますが、全てのプロパンガスユーザーが適正より高い料金を払っているわけではありません。まずは、自宅のプロパンガス料金が本当に高いのか判断するために、プロパンガスの平均料金を確認しておきましょう。
平均料金 | |
---|---|
1月 | ¥10,647 |
2月 | ¥13,153 |
3月 | ¥12,321 |
4月 | ¥11,545 |
5月 | ¥10,214 |
6月 | ¥9,011 |
7月 | ¥7,718 |
8月 | ¥7,063 |
9月 | ¥7,200 |
10月 | ¥8,524 |
11月 | ¥10,287 |
12月 | ¥12,328 |
※2024年6月 エネピ調べ
さて、自宅のプロパンガス料金と比べていかがでしょうか?
「うちのガス料金より安い」「大体うちと同じくらい」といった場合は、プロパンガス料金を払い過ぎているかもしれません。
なお、上記は東京都の平均料金です。全国の都道府県別・市区町村別の平均料金はこちらのページから確認できます。
いまより安いガス会社に切り替えよう!
「平均と同じくらいなのに安くなるの?」そう疑問に思われた方も安心して下さい。実はプロパンガスの平均料金は適正より高めになっているのです。
理由は先述のとおり、自由料金設定であることを利用し適正より高額なガス料金を提示するガス会社がいるためです。さらにプロパンガス業界では、複数のガス会社で共謀し料金相場を高めに設定する、といった談合が行われてきた歴史があります。
こうした事情により、多くのご家庭が、適正料金を提示しているガス会社に切り替えるだけでガス料金を安くできるのです。
ちなみに、enepi(エネピ)の「プロパンガス料金比較サービス」を利用すれば、WEB上で簡単にガス会社を探すことができます。さらに、当サービスに登録されているガス会社は「不当な値上げなし」「非常時にすぐ対応」といった条件を満たしているため、安心してガス会社を選ぶことができますよ。
プロパンガス(LPガス)のメリット
プロパンガスは「料金が高い」という面を強調されがちですが、実は優れた点もたくさんあるのです。本項では、そんなプロパンガスのメリットを紹介します。
メリット1:環境にやさしい
プロパンガスは燃焼すると少量の二酸化炭素と 水になりますが、とくに有毒な物質は発生しないため、 環境にやさしいエネルギーといえます。
また、ガスボンベ内に硫化物などの不純物質が含まれていないか、ガス会社がしっかり点検しています。
メリット2:災害時の復旧が早い
プロパンガスはボンベに収納されたガスを直接導管で家庭内に引込しているので、災害発生時には外部からの接続の復旧を待つ必要がありません。たとえば東日本大震災の時も、都市ガスよりも12日、電気よりも58日も早く完全復旧しています。
また、プロパンガスは通常50kgボンベが2本設置してあるので、1本目が切れても2本目を利用すれば1ヶ月以上ガスを使用し続けることが可能です。
メリット3:安全・安心。
多くのプロパンガス会社は、契約者が安心してガスを使用できるように、事故防止システムを積極的に導入しています。その成果もあり、プロパンガスの事故発生率は0.001%※という非常に低い割合に抑えられているのです。
メリット4:どこでも使用可能
プロパンガスは、ガスボンベさえ設置すればどこでも使用することができます。一方で都市ガスは、地域全体にガス管が引かれていることが条件なので、使用できない地域も多くあります。
メリット5:初期費用がかからない
一般にプロパンガスの設備・機器にかかる初期費用はガス会社が負担してくれます。ただし、この初期費用は月々のガス料金に上乗せされ、少しずつ回収されていく仕組みです。ただ、高額な初期費用を一度に請求されない点はメリットといえるでしょう。
プロパンガス(LPガス)のデメリット
続いて、プロパンガスのデメリットも確認しておきましょう。
デメリット1:料金が高い
プロパンガスのネックはやはり料金面でしょう。都市ガスと比較すると1.5~2倍の料金がかかります。また、賃貸住宅では設備投資にかかった費用が入居者のガス代に上乗せされてしまうケースが多いため、持ち家のプロパンガス料金の1〜3割増しになる傾向があります。
なお、プロパンガスと都市ガスの具体的な料金差はこちらの記事で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
都市ガスとプロパンガスの料金比較!世帯人数別、地域別に徹底解説
デメリット2:料金を値上げされやすい
プロパンガスは自由料金制を採用しているため、ガス会社が料金変更を行いやすいという一面があります。ちなみに、ガス会社は値上げを行う際に契約者に書面等で通知し同意を得る義務があるのですが、契約者が通知に気付かず「知らない間に料金が高くなっていた」といったケースも起きてしまっています。
まとめ
ここまでの内容について、簡単に整理しておきましょう。
「プロパンガス」と「LPガス」の違いは? |
---|
LPガスのうち主原料がプロパンのものをプロパンガスと呼びます。一般に家庭で用いられる場合にはLPガスとプロパンガスは同じものとして扱われます。したがって、家庭で用いられるガスはプロパンガス(LPガス)と都市ガスの2種類です。 |
「プロパンガス」と「都市ガス」の違いは? |
プロパンガスと都市ガスは様々な違いがありますが、消費者にとって重要なのは「供給面」と「料金面」でしょう。プロパンガスは都市ガスよりも供給できる地域が多く、一方で都市ガスよりも料金が高いです。 |
なぜプロパンガスは都市ガスよりも料金が高いの? |
プロパンガスの料金が都市ガスと比べて高い理由は、供給設備や料金制度が違うためです。ちなみに、プロパンガスの料金はガス会社を変更することで大幅に下げられる可能性があります。 |
最後に、プロパンガスのメリットとデメリットをまとめておさらいしましょう。
プロパンガスのメリット
- 環境にやさしい
- 災害時の復旧が早い
- 安全性が高い
- 対応エリアが広い
- 初期費用がかからない
プロパンガスのデメリット
- 都市ガスより料金が高い
- 契約後に値上げが行われる可能性がある
プロパンガスは「料金が高い」だけでなく、「災害に強い」「安全安心」「対応エリアが広い」など、数多くのメリットもあります。そんなプロパンガスが家計の負担にならないように、ぜひガス会社の切り替えを検討してみてくださいね。