毎月の電気料金の請求額を見て、「最近、北陸電力の電気代が高くなった」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか 。その背景には、社会情勢や電力の供給構造など、複数の要因が関係しています。
この記事では、北陸電力の電気料金が高いとされる理由を分かりやすく解説するとともに、今日から実践できる具体的な節約方法をご紹介します。ご家庭の電気料金を見直すきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
なぜ北陸電力の電気料金は高いのか?
電気料金が高くなる背景には、いくつかの理由が複合的に絡み合っていると考えられます。ここでは、主な理由として考えられる3つのポイントを詳しく見ていきましょう。
理由①:燃料価格の高騰を反映する「燃料費調整額」
電気料金の明細には「燃料費調整額」という項目があるのをご存知でしょうか 。これは発電に使う液化天然ガス(LNG)や石炭といった燃料の価格変動を、電気料金に反映させるための仕組みです。
日本のエネルギーは多くを輸入に頼っているため、ウクライナ情勢の緊迫化や急激な円安によって燃料調達コストが上昇し、それが燃料費調整額として電気料金に上乗せされました。近年の電気料金高騰の大きな要因の一つが、この燃料費調整額の上昇にあるのです。
理由②:火力発電への依存度と志賀原発の停止
日本の大手電力会社は、それぞれ電源構成(発電方法の構成)が異なります。北陸電力は他の電力会社と比較して、コストの高い火力発電に頼っている側面があります。加えて、志賀原子力発電所が長期にわたり停止していることも、電気の供給コストに影響を与えていると考えられます。
もし、より安価に発電できる原子力が稼働していれば、火力発電への依存が下がり、全体のコストを抑制できる可能性があります。このような電源構成の事情が、料金水準に影響している一つの要因といえるでしょう。
理由③:2023年に行われた料金改定
北陸電力は2023年に、国の審査を経て電気料金の値上げを実施しました。これは、燃料価格の高騰や安定供給を維持するための設備投資など、企業努力だけでは吸収しきれないコスト増を料金に反映させるためのものでした。この料金単価自体の見直しも、現在の料金水準に直接的に影響しています。
電気代を安くするための具体的な方法
料金が高い理由が分かっても、家計への負担は少しでも減らしたいものです。ここでは電気代を節約するための具体的な方法を、取り組みやすさも考慮して紹介します。
ステップ①:ご家庭に合った「料金プラン」に見直す
現在契約している料金プランが、ご自身のライフスタイルに最適とは限りません。まずは、北陸電力のWebサービス「ほくリンク」などで、毎月の電気使用量や料金プランを確認しておきましょう。
見直すポイント:
- 契約アンペアの見直し:必要以上に大きなアンペアで契約している場合、基本料金が高くなっている可能性があります。
- 時間帯別プランの検討:日中はあまり家にいない、夜間に電気を多く使うといった家庭では、夜間の電気料金が割安になるプランに変更することで、トータルの料金を抑えられる場合があります。
ステップ②:根本的な解決策「電力会社の乗り換え」を検討する
2016年の電力自由化以降、私たちは住んでいるエリアに関わらず、さまざまな電力会社を自由に選べるようになりました。北陸電力エリアでも、より料金単価の安い新電力へ乗り換えることが可能です。
「手続きが面倒そう」「電気の質が変わるのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、心配は不要です。
切り替え時に気になるポイント:
- メリット:料金プランが豊富で、基本料金や電力量料金が安くなる可能性があります。ガスとのセット割や、ポイントが貯まるサービスなど、各社が特色あるプランを提供しています。
- デメリット・注意点:メリットだけでなく、キャンペーンの適用条件や契約期間の縛りなど、注意すべき点も存在します。各社のプランを公平に比較し、ご自身の使い方に合った会社を選ぶことが重要になります。
- お手続き:申し込みはWebサイトで完結する場合がほとんどで、現在の電力会社への解約連絡も不要です。送電網は北陸電力のものをそのまま使うため、電気の品質や停電のリスクが変わることはありません。
どの会社が良いか分からない場合は、エネピの「料金比較サービス」を活用してみてください。簡単な情報を入力するだけで、ご家庭に最適な料金プランを手間なく見つけることができます。
自分に合ったプランとは?主要料金プランを分析
料金プランの見直しを検討する上で、どのような選択肢があるのかを知ることが重要です。北陸電力には、ライフスタイルに合わせて選べるいくつかの料金プランが用意されています。
| プラン名 | 最適な利用者像 | 主要な特徴 | 基本料金体系 | 電力量料金体系 | 燃料費調整額の上限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 従量電灯B(規制料金) | 全ての家庭の比較基準となる標準的な利用者 | 料金改定に国の認可が必要な安定性 | 契約アンペア別 | 3段階の従量課金制 | あり(ただし実効性は低下) |
| 従量電灯ネクスト(自由料金) | ポイントを貯めたい標準的な利用者 | 「電気deポイントプラス」によるポイント付与 | 契約アンペア別 | 3段階の従量課金制 | なし |
| くつろぎナイト12(自由料金) | エコキュート等を利用するオール電化住宅 | 夜間(20時~8時)の料金が割安 | kVA契約(高めの固定料金) | 時間帯別(TOU)料金 | なし |
| 使っておとくライト(自由料金) | 月々の電気使用量が非常に多い家庭 | 120kWhまで定額、超過分はフラットな単価 | 定額制(120kWh分を含む) | 120kWh超過分は単一料金 | なし |
| 節電とくとく電灯(自由料金) | 節電意識が高く、デマンドレスポンスに参加できる家庭 | 指定された時間帯の節電量に応じて大幅割引 | 契約アンペア別 | 3段階の従量課金制 | なし |
この表は、代表的な家庭向けプランの特徴と料金体系を比較したものです。ご自身の電気の使い方と照らし合わせて、最適なプランを見つける参考にしてください。
従量電灯B:
電力自由化以前から存在する伝統的な規制料金プランであり、全ての料金比較における基本的なベンチマーク(基準点)となります。基本料金は契約アンペアに応じて設定されており、10Aから60Aまで段階的に上昇します。電力量料金は使用量に応じて単価が上がる3段階制を採用しています。日中・夜間を問わず電気を使う典型的なご家庭向けのプランといえます。
| 料金区分 | 契約区分/使用量区分 | 料金単価(円) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 10A | 302.50 |
| 基本料金 | 15A | 453.75 |
| 基本料金 | 20A | 605.00 |
| 基本料金 | 30A | 907.50 |
| 基本料金 | 40A | 1210.00 |
| 基本料金 | 50A | 1512.50 |
| 基本料金 | 60A | 1815.00 |
| 電力量料金 | 最初の120kWhまで | 30.86 |
| 電力量料金 | 120kWhをこえ300kWhまで | 34.75 |
| 電力量料金 | 300kWhをこえる分 | 36.46 |
従量電灯ネクスト:
北陸電力が提供する自由料金プランの中で最も標準的なプランです。「従量電灯B」と非常に似た料金構造を持っており、基本料金は全く同一ですが、電力量料金は各段階でごくわずかに安く設定されています。また、毎月の電気料金に応じてポイントが貯まる「電気deポイントプラス」を利用できます。つまりこのプランは、規制料金からの移行を促すための、ポイント付与というインセンティブを付けた実質的な後継プランと位置づけられます。
| 料金区分 | 契約区分/使用量区分 | 料金単価(円) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 10A | 302.50 |
| 基本料金 | 15A | 453.75 |
| 基本料金 | 20A | 605.00 |
| 基本料金 | 30A | 907.50 |
| 基本料金 | 40A | 1210.00 |
| 基本料金 | 50A | 1512.50 |
| 基本料金 | 60A | 1815.00 |
| 電力量料金 | 最初の120kWhまで | 30.82 |
| 電力量料金 | 120kWhをこえ300kWhまで | 34.71 |
| 電力量料金 | 300kWhをこえる分 | 36.42 |
くつろぎナイト12:
エコキュートや電気温水器、蓄熱式暖房機などを利用しているオール電化住宅向けのプランです。夜間(20時~翌朝8時)の電力量料金が割安に設定されているのが最大のメリットです。夜間に電気を多く使うライフスタイルの方におすすめですが、昼間の料金は割高になる点に注意が必要です。料金体系は基本料金と、季節や時間帯によって単価が変動する電力量料金で構成されます。
| 料金区分 | 契約区分/使用量区分 | 料金単価(円) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 最初の10kVAまで | 2255.00 |
| 基本料金 | 10kVAをこえる分 (1kVAにつき) | 302.50 |
| 電力量料金 | 昼間時間(平日8時~20時) | 39.87 |
| 電力量料金 | ウィークエンド時間(土日祝日8時~20時) | 33.80 |
| 電力量料金 | 夜間時間(全日20時~翌8時) | 26.98 |
使っておとくライト:
電気自動車の充電や大家族など、電力消費が非常に多い特定の世帯に特化した料金プランです。月額4,325.50円という高額な基本料金ですが、この料金には月間120kWhまでの電力量料金が含まれています。120kWhを超えた分の使用量に対しては、一律で約35.75円/kWhというフラットな単価が適用されます。これにより、一定の使用量を超えると、3段階目で単価が高くなるプランよりも総額が安くなるように設計されています。
| 料金区分 | 契約区分/使用量区分 | 料金単価(円) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 最初の3kVAまで(120kWhまでの電力量料金を含む) | 4325.50 |
| 基本料金 | 3kVAをこえる分 (1kVAにつき) | 302.50 |
| 電力量料金 | 120kWhをこえる分 | 35.75 |
節電とくとく電灯:
電力需要が逼迫するピーク時間帯に、電力会社からの要請に応じて節電に協力することで、インセンティブ(割引)を得られる「デマンドレスポンス(DR)」の考え方を取り入れたプランです。北陸電力が事前に指定した節電要請期間中(例:夏季の平日午後など)に、基準となる使用量から節電した電力量に一定の割引が適用されます。なお、基本料金・電力量料金は「従量電灯ネクスト」と全く同一です。
| 料金区分 | 契約区分/使用量区分 | 料金単価(円) |
|---|---|---|
| 基本料金 | 10A | 302.50 |
| 基本料金 | 15A | 453.75 |
| 基本料金 | 20A | 605.00 |
| 基本料金 | 30A | 907.50 |
| 基本料金 | 40A | 1210.00 |
| 基本料金 | 50A | 1512.50 |
| 基本料金 | 60A | 1815.00 |
| 電力量料金 | 最初の120kWhまで | 30.82 |
| 電力量料金 | 120kWhをこえ300kWhまで | 34.71 |
| 電力量料金 | 300kWhをこえる分 | 36.42 |
| 節電割引 | 節電量1kWhにつき | 132.00 |
結局、どのプランを選ぶべき?
ここまで見てきたとおり、プランごとに料金体系や単価は大きく異なります。上記を目安に、ご自身のライフスタイルに最も合ったプランを検討してみましょう。北陸電力のWebサービス「ほくリンク」では、現在の使用状況から最適なプランをシミュレーションすることも可能ですので、一度試してみることをおすすめします。
他社の料金プランと比較!北陸電力 vs 主要新電力
2016年の電力小売全面自由化以降、北陸エリアにも「新電力」と呼ばれる電力会社が多数参入し、地域独占を続けてきた北陸電力と競合しています。北陸エリアで存在感を示す主要な新電力は、それぞれ異なる強みと戦略を持っています。
- オクトパスエナジー: 英国発祥の企業で、再生可能エネルギー100%の供給と、顧客体験を重視したサービスを特徴としています。各種比較サイトでは、純粋な料金の安さで上位にランクインすることが多く、価格競争をリードする存在です。
- シン・エナジー : こちらも価格競争力のある新電力として知られ、北陸電力よりも安価な料金設定を提示しています。
- TERASELでんき: 使用量に応じて「TERASELプラン」(少~中量向け)と「超TERASELプラン」(多量向け)の2つのプランを用意し、幅広い顧客層に対応しています。楽天ポイントが付与される点も特徴です。
- ENEOSでんき / idemitsuでんき: 日本を代表するエネルギー企業であり、既存のガソリンスタンド網やブランド力を活かした戦略を展開しています。特に、ガソリン代の割引など、電力以外のサービスとの連携(バンドル割引)が大きな強みです。
- Looopでんき: 他社とは一線を画す、市場連動型プラン「スマートタイムONE」を提供しています。これは、電力卸売市場の価格変動を30分ごとに直接料金に反映させるもので、消費者に全く新しいリスク・リターンの関係性をもたらします。
料金シミュレーション:北陸電力 vs 新電力
各社の多様な料金プランを、具体的な月額料金に落とし込んで比較することで、その競争力を客観的に評価します。ここでは、標準的な家庭の電力使用量を3パターン(200kWh、400kWh、550kWh)に分け、2025年7月時点の料金(燃料費調整額:-7.43円/kWh、再エネ賦課金:3.98円/kWhを共通の前提として適用)をシミュレーションします。
| 事業者 | プラン名 | 月額料金 (200kWh / 1-2人世帯) | 月額料金 (400kWh / 3人世帯) | 月額料金 (550kWh / 4-5人世帯) | 料金モデル / 主要な差別化要因 |
|---|---|---|---|---|---|
| 北陸電力 | 従量電灯ネクスト | 約7770円 | 約14900円 | 約20500円 | 3段階料金制、ほくリンクポイント |
| オクトパスエナジー | グリーンオクトパス | 約7000円 | 約11350円 | 約14500円 | 3段階料金制(単価が安い)、実質再エネ100% |
| シン・エナジー | きほんプラン | 約7450円 | 約11800円 | 約15000円 | 3段階料金制(単価が安い)、JALマイル提携 |
| Looopでんき | スマートタイムONE | 市場価格に連動 | 市場価格に連動 | 市場価格に連動 | 市場連動型(30分毎に単価変動)、ハイリスク・ハイリターン |
| ENEOSでんき | 北陸Vプラン | 約7750円 | 約14700円 | 約19900円 | 3段階料金制、ガソリン割引・各種ポイント連携 |
| TERASELでんき | 超TERASELプラン | 約7800円 | 約14650円 | 約19700円 | 3段階料金制(多消費で割安)、楽天ポイント連携 |
※上記シミュレーションは公表されている料金単価に基づく概算値です。Looopでんきは市場価格に連動するため固定的な比較は困難です。また、一部新電力は独自の燃料費調整単価を設定している場合があり 、実際の請求額とは異なる可能性があります。
このシミュレーションから明らかなように、特に電力使用量が多い家庭(400kWh以上)において、オクトパスエナジーやシン・エナジーといった新電力が、北陸電力の標準プランに対して価格優位性を持っています。一方で、ENEOSでんきやTERASELでんきは、北陸電力とほぼ同等の価格帯にあり、その価値は料金外の付加サービスによって左右されることが分かります。
まとめ
この記事では、北陸電力の電気料金が高い背景と具体的な節約方法、さらに北陸電力の料金プランと「新電力」という新たな選択肢について解説しました。
料金が高い主な理由:
- 燃料費調整額の高騰
- 火力発電への依存による構造的要因
- 2023年に行われた料金単価の見直し
家庭でおすすめの対策:
- 契約アンペアや料金プランを見直す
- より安い電力会社への乗り換えを検討する
電気料金が高いと悩むだけでなく、ご自身にできることから実践してみることが大切です。まずは検針票やWeb明細を確認し、ご自身の電気の使い方を把握することから始めてみてはいかがでしょうか 。その上で、より根本的な見直しを検討する際には、エネピの「料金比較サービス」がきっとお役に立ちます。
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