- 過去数年間、特に2022年以降、世界的なエネルギー価格の高騰の影響を受け、都市ガスとプロパンガスともに料金が上昇傾向にあります。
- 日本国内ではエネルギーの多くを輸入に依存しているため、円安や国際的な供給不足も影響し、ガス会社は価格を引き上げざるを得なくなっています。
ガス料金の計算方法
ガス料金は主に3つの要素で構成されています。
ガス料金 = 基本料金 + 従量料金(+ 設備料金)
基本料金:
ガスメーターや供給配管などの設備費用、点検調査、事務手数料などを含む固定費用です。
従量料金:
ガスの使用量に応じて変動する料金です。使用量に従量単価を掛けて算出します。
設備料金:
一部の契約で適用されます。基本料金から設備費用を分割した料金です。
二部料金制と三部料金制の違い
ガス料金の体系には主に二部料金制と三部料金制があります。二部料金制は基本料金と従量料金から構成されます。これまで多くのガス会社で採用されてきた最も一般的な料金体系です。
三部料金制は基本料金・従量料金に加え、設備料金が別途加算される仕組みです。基本料金に含まれていたガス漏れ警報器の使用料やガス設備の維持管理費用などが別途請求されるため、請求内容の透明性が上がります。
なお、法令により今後ガス会社は三部料金制を徹底することになります。
ガス料金の最新相場
ガス料金は都市ガスとプロパンガスで異なり、季節や国際情勢によって変動しています。都市ガスは比較的安定した料金体系ですが、プロパンガスは自由料金制のため、各社によって料金が異なることが多いです。
以下に、都市ガスとプロパンガスの平均料金を紹介します。
【都市ガス】
世帯人数 | 平均料金 |
---|---|
1人 | ¥4,971 |
2人 | ¥7,256 |
3人 | ¥8,735 |
4人 | ¥8,919 |
※全国平均(エネピ調べ)
【プロパンガス】
世帯人数 | 平均料金(夏季) | 平均料金(冬季) |
---|---|---|
1人 | ¥4,547 | ¥8,192 |
2人 | ¥5,684 | ¥10,240 |
3人 | ¥8,237 | ¥14,868 |
4人 | ¥10,379 | ¥18,559 |
※全国平均(エネピ調べ)
このように、都市ガスはプロパンガスに比べて料金が安いため、選択肢として有利です。一方、プロパンガスは供給エリアが広く、都市ガスが利用できない地域でも使用可能ですが、料金は高めに設定されています。プロパンガスの料金は都市ガスの2倍以上になることもあります。
ガス料金の推移
過去数年間、特に2022年以降、世界的なエネルギー価格の高騰の影響を受け、都市ガスとプロパンガスともに料金が上昇傾向にあります。以下に、都市ガスとプロパンガスの料金推移を紹介します。
【都市ガス】
※全国平均(新電力ネットより)
【プロパンガス】
※全国平均(石油情報センターより)
ガス料金は全体的に上昇傾向ですが、地域性や使用量、料金プランなどを考慮する必要があります。特に、プロパンガスは会社ごとに料金プランが大きく異なるため注意が必要です。
地域ごとの詳細なガス料金が知りたい方は、以下のページを参考になさってください。
全国の都市ガス料金を比較!対応エリアを調べる方法も紹介
全国のプロパンガス(LPガス)の平均利用額はココでチェック!
ガス代値上げの理由とは?
ガス代の値上げには複数の要因が関係しています。特に近年は以下のような理由が大きく影響しています。
世界的なエネルギー価格の動向
近年、世界的なエネルギー価格は急激に上昇しています。特に、ロシアによるウクライナ侵略が始まった2022年以降、エネルギー市場は大きな混乱に見舞われました。
この侵略により、ロシア産エネルギーへの依存度が高い欧州諸国は、代替エネルギーの確保を急ぐ必要に迫られ、LNG(液化天然ガス)の需要が急増しました。その結果、LNGのスポット価格は2021年の約6ドル/MMBtuから2022年には約85ドル/MMBtuにまで急騰しました。
また、円安や国際的な供給不足も影響し、日本国内のガス価格は上昇を続けています。特に、原料費調整額が高騰していることが、ガス料金に直接的な影響を与えています。
参照:世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰(経済産業省 資源エネルギー庁)
原料費調整制度とは?
原料費調整制度とは、ガス会社が購入するLNGの価格が上昇すると、その影響が消費者のガス料金に反映される仕組みです。この制度はガス会社が安定した経営を維持するために必要ですが、消費者にとっては料金の上昇を招く要因となります。特に2022年以降のエネルギー価格の高騰により、原料費調整額が大幅に増加し、ガス料金の引き上げに繋がっています。
日本国内でのガス需要と供給の状況
日本国内ではエネルギーの多くを輸入に依存しているため、国際的なエネルギー価格の変動が直接的な影響を及ぼします。特に2022年以降のエネルギー価格の高騰によりガスの供給が厳しくなり、需要に対して供給が追いつかない状況が続いています。そのためガス会社は価格を引き上げざるを得なくなっています。
そこで、日本政府はエネルギー価格の高騰に対する対策として、複数の支援制度を導入してきました。例えば、家庭や企業へのエネルギー価格の上限設定や、特定の世帯に対する補助金の支給などが行われています。
しかし、これらの支援制度は一時的なものであり、根本的なエネルギー供給の安定化には限界があります。長期的には、エネルギーの多様化や再生可能エネルギーの導入が求められていますが、現状では依然として化石燃料への依存が高いため、価格の安定化には時間がかかると考えられます。
ガス代値上げの家庭への影響
近年のガス代値上げは家庭に大きな影響を与えています。まず、家庭のガス代の確認方法を説明します。
Webサービスの利用:
多くのガス会社では専用のWebサービスを提供しており、会員登録をすることで、オンラインで使用量や請求金額を確認できます。例えば、東京ガスの「myTOKYOGAS」では過去の使用量や料金をグラフで比較することができ便利です。
検針票の確認:
毎月送付される検針票には使用量や請求金額の内訳などが記載されています。これを基に自宅のガス代を正確に把握できます。なお検針票の見方については以下のページを参考にしてください。
ガスメーター・検針票の見方をわかりやすく解説!ガスの使用量、料金表示について理解しよう!
電話での問い合わせ:
ガス会社に直接電話をかけて、使用量や料金について問い合わせることも可能です。
それでは、近年のガス代値上げによる家庭への影響について、標準的な世帯における負担増の具体例を挙げて説明します。以下は、二人以上世帯を対象とした年間ガス代の推移です。
年間ガス代 | |
---|---|
2021年 | ¥55,778 |
2022年 | ¥62,788 |
2023年 | ¥62,508 |
参照:家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 年間収入階級別(総務省統計局)
このデータによると、2021年から2023年にかけて、年間で6,730円の増加となっています。月平均に換算すると約560円の増加です。
このように、ガス代の値上げは家計に直接的な影響を与えます。特に冬場には暖房や給湯器の使用が増えるため、ガス代がさらに高くなる傾向があります。
値上げに対する補助制度
政府は2025年1月から3月まで「電気・ガス料金負担軽減支援事業」を実施します。これは物価高により厳しい状況にある生活者を支援するため、家庭の使用量の最も多い時期である冬期の電気・ガス代を軽減することが目的です。
具体的な補助金額は以下のとおりです。
【値引き単価】
■2025年1・2月使用分
電気(低圧):2.5円/kWh
都市ガス:10.0円/㎥
■ 2025年3月使用分
電気(低圧):1.3円/kWh
都市ガス:5.0円/㎥
参照:電気・ガス料金支援(経済産業省 資源エネルギー庁)
なお、値引きを受けるために申請などの手続きは不要です。ただ、過去に個人情報(生年月日、住所、家族構成など)や手数料を求める不審な電話が発生しています。今回もそのような電話があった場合は、専用の問い合わせ窓口に相談してください。
※平日9:00~17:00、2024年12月30日(月)~2025年1月3日(金)を除く
ところで、同支援事業は電気・都市ガスの利用者を対象としており、プロパンガスは対象外です。そこで、プロパンガスユーザーの方はご自身で対策を講じる必要があります。以下に、具体的な方法を紹介します。
家庭で使えるガス代節約術
ガス代の値上げは月々の支出に直接的な影響を与えます。特に家庭での食事やお風呂などの用途でガスを多く使用する主婦にとって、家計のバランスを取ることが難しくなることへの不安があると思います。そこで家庭のガス代を節約するために、いくつかの効果的な方法を紹介します。
日常で使える節約術
ガス代は日々のちょっとした工夫で節約できます。特に以下のシーンで思っている以上にガス代を削減できるかもしれません。
シーン①給湯時
給湯時は、お湯の設定温度を下げることでガス代を節約できます。例えば、シャワーの使用時に42℃から40℃に下げることで、1日あたり約8.1円※の節約が可能です。
また、お風呂の追い焚きを必要最低限にすることで、ガスの消費を抑えることができます。特に、次に入浴する人がいない場合は自動運転機能をオフにすることをおすすめします。
また、お風呂の残り湯を洗濯や掃除に利用することで、新たにお湯を沸かす必要がなくなり、ガス代を節約できます。ただし以下の点に注意してください。
・残り湯の温度が低いと洗剤の洗浄力が落ちることがある
・入浴剤を入れた場合は色素が移る可能性があるため白い衣類には使用しない
・すすぎはきれいな水で行う
※ガス代の節約はお風呂から! 節約のプロに聞く光熱費カット方法(東京ガス)
シーン②調理時
調理時は、圧力鍋を使うことで調理時間を短縮し、ガスの使用量を減らすことができます。また、まとめて料理を作り、冷凍保存することで、ガスを使う回数を減らせます。
お湯を沸かす際には、ガスコンロではなく電気ケトルを使用することでガス代を節約できます。電気ケトルは沸騰後は自動的に保温に切り替わるため、効率的で無駄がありません。
シーン③暖房使用時
ガスファンヒーターなど暖房器具の設定温度を低めに設定することで、ガスの消費を抑えることができます。さらに、部屋の断熱対策も重要です。例えば窓に断熱カーテンを使用することで室内の温度を保ちやすくなり、暖房の効率が向上します。これにより暖房にかかるガス代を節約できます。
ちなみにガスファンヒーターは暖まり方が早く、広い範囲を暖めることができますが、ガス消費量も大きいです。電気ヒーターや石油ファンヒーターなど、他の暖房器具も検討してみてください。よりエネルギー効率の良い機器を導入することで、全体の光熱費を削減できます。
なお、これらの節約術を実践する際は「家計管理アプリ」が非常に役立ちます。同アプリは単に支出を記録するだけでなく、光熱費の推移をグラフ化したり、過去のデータと比較したりすることで、どの部分が無駄になっているのかを可視化してくれるからです。継続的に利用することで、ガス代だけでなく電気代や水道代など光熱費全体の削減に繋がります。
長期的な対策
ガス代を削減するためには、一時の節約だけでなく、以下のような根本的な解決策が有効です。これらの対策は初期費用がかかる場合もありますが、長期的に見れば光熱費の削減や快適な生活の実現につながります。
対策①省エネ設備への切り替え
従来の給湯器をエコジョーズなどの高効率給湯器に交換することで、ガスの使用量を大きく減らすことができます。初期費用はかかりますが、光熱費の削減により数年で回収できる可能性があります。
対策②住宅の断熱改修
住宅の壁や天井、床に断熱材を追加することで暖房効率が向上し、冬場のガス使用量を減少させることができます。また、内窓の設置や断熱ドアの導入も効果的です。
対策③再生可能エネルギーの導入
自宅に太陽光発電システムを導入することで、電力を自給自足に切り替えることができます。そこで、電気を利用した暖房器具や給湯機を導入することでガス代を削減できます。
なお、これらの対策には国や地方自治体による補助金制度が利用できる場合があります。具体的な制度は地域や時期によって異なるため、お住まいの自治体のホームページを確認してみてください。
対策④料金プランの見直し
ガス会社および料金プランの切り替えは、手軽にガス代を削減できる有効な手段の一つです。具体的には以下のようなメリットがあります。
- ガス料金の比較:複数のガス会社を比較することで、より安い料金プランを見つけられます。
- セット割の利用:電気やインターネットとのセット割を利用することで、さらなる割引が受けられる場合があります。
- 新料金プランの導入:各社が新しい料金プランを導入しているため、より現状に適したプランを選ぶことが可能です。
エネピは、インターネット上で複数のガス会社の料金プランを一度に比較できるサービスです。現在のガス代や世帯人数を入力するだけで、ご自身に最適なプランが見つかります。また、ガスの基礎知識からガス会社の選び方まで、幅広い情報をご紹介しています。ぜひエネピの公式サイトから確認してみてください。
ガス料金の今後の見通しは?
ガス料金の今後の見通しについて、以下の観点から解説します。
- 専門家による予測
- 政府の対応方針
- 国際情勢との関連性
専門家の見解によるとガス料金は今後も変動が予想されますが、特に2025年にかけては安定した価格が期待されるとのことです。例えば、アナリストの中には、2025年の天然ガスの平均価格が約$3/MMBtuになると予測しており、これは2024年の価格よりも約36%の増加を示していますが、過去の高騰に比べると安定しているとされています。
参考:E&ENEWS
日本政府はエネルギー価格の高騰に対して「電気・ガス料金負担軽減支援事業」を実施します。この政策は家庭や企業の負担を軽減するために電気・ガス代の一部を補助するものですが、2025年1月から3月までの一時的な措置です。そのため、補助終了後に再び料金が高くなる可能性があります。
国際情勢は特にウクライナ情勢や円安がガスの原料費に影響を及ぼしています。例えばロシアからのエネルギー供給が不安定になると、他の供給源に依存する必要が生じ、価格が上昇する可能性があります。また、AI産業などによる世界的なエネルギー需要の増加も価格に影響を与える要因となります。
今後のガス料金は、長期的には安定化が期待されるものの、短期的には価格の変動が続く可能性が高いです。引き続き、国際情勢や政府の対応に注意が必要です。
まとめ
ここまでの内容について、簡単に整理しておきましょう。
ガス料金の最新相場とは? |
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ガス料金は都市ガスとプロパンガスで異なります。都市ガスの平均価格は227.1円/㎥、プロパンガスは9,102円/10㎥です(2024年8月時点)。プロパンガス料金は都市ガスより高めに設定されていますが、使用量はプロパンガスの方が少ない場合が多いです。 |
ガス代値上げの原因とは? |
近年は世界的にエネルギー価格が上昇しています。特にロシアによるウクライナ侵略が始まった2022年以降、エネルギー市場は大きな混乱に見舞われました。また円安や国際的な供給不足も影響し、日本国内のガス価格は上昇を続けています。 |
ガス代値上げの対策とは? |
ガス代を削減するためには、日々の節約だけでなく、長期的な対策が有効です。例えば、省エネ設備への切り替えや住宅の断熱改修、料金プランの見直しなどです。特に料金プランの切り替えは費用が発生しないため、手軽にガス代を削減できる手段の一つです。 |