今回は都市ガスに焦点を当て、その基本的な特徴からメリット・デメリットまでを説明します。また、プロパンガス(LPガス)との違いについても解説します。都市ガスは暖房や調理に使用される身近なエネルギーですので、ぜひ理解を深めていきましょう。
都市ガスとは?
都市ガスは都市部で暮らす人々に供給されるエネルギーであり、主に天然ガスを原料として製造されます。ガス会社から地下の配管を通じて住宅や施設などに供給され、ガスコンロや給湯器、暖房器具などの燃料として使用されます。
都市ガスは無臭ですが、安全のために微量の付臭剤が添加されており、ガス漏れを検知しやすくしています。また、石油・石炭よりも二酸化炭素排出量が少なく、環境に比較的やさしいエネルギーとされています。
都市ガスの原料・主成分
都市ガスの主な原料は天然ガス、主成分はメタンです。都市ガスは天然ガスをベースにして加工・調整を経て不純物が取り除かれ、均一で安定して利用できるエネルギーとなります。要するに、都市ガスは天然ガスをより使いやすくしたものと考えることができます。
天然ガスとは?
天然ガスは主にメタンを主成分とする化石燃料です。地中に存在する可燃性のガスで、ガス田から採掘されます。天然ガスは発電や工業用燃料としても使用されますが、そのままではパイプラインでの輸送が難しいため、液化天然ガス(LNG)として輸送されることが一般的です。天然ガスは他の化石燃料と比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないエネルギーです。
都市ガスとプロパンガスの違い
都市ガスとプロパンガスは、以下のような点で違いがあります。
- 原料と輸入先
- 供給手段とエリア
- 料金設定と価格帯
原料と輸入先:
都市ガスは主にメタンを主成分とする天然ガスを原料としています。液化天然ガス(LNG)として輸入される場合が多く、主な輸入国はオーストラリアやアメリカなどです。一方プロパンガスはプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)を原料としています。主な輸入国はアメリカ、UAE、サウジアラビアなどです。
供給手段とエリア:
都市ガスは地下に敷設されたガス管を通じて各家庭に供給されます。このため供給エリアはガス導管が敷設されている地域に限られ、多くは人口密度の高い都市部です。一方プロパンガスはガスボンベに充填された状態で各家庭に配送されます。ボンベは自宅の屋外に設置され、定期的に補充されます。このため全国どこでも供給可能です。
料金設定と価格帯:
都市ガスは供給コストが低いため一般的に料金は安価で、利用者にとって経済的な選択肢となることが多いです。一方プロパンガスは都市ガスに比べて料金が高くなる傾向があります。一般的にプロパンガスは都市ガスの約1.7~1.8倍の料金になることが多いです。また、プロパンガスは自由料金制ため業者間で価格差が大きく、平均価格が上がりやすい状況があります。そこで利用者は契約前に複数業者を比較することが重要です。
都市ガスのメリットとデメリット

続いて、都市ガスメリットとデメリットについて説明します。プロパンガスとの違いを踏まえてあると理解が深まりますよ。
都市ガスのメリット
メリット1:料金が安い
都市ガスはプロパンガス(LPガス)よりも料金が安い傾向があります。公共料金として設定されているため、急激な値上げがなく、安定した価格で利用できます。
メリット2:環境にやさしい
都市ガスは燃焼時に発生する二酸化炭素の排出量が石炭や石油より少ないため、安全性が高く、クリーンなエネルギーと言われています。
メリット3:スペースを取らない
都市ガスは地下に張り巡らされたガス導管を通じて供給されるため、ガス設備のための場所をあまり取りません。ガスボンベやタンクを設置する必要がないため、スペースを有効に活用できます。
都市ガスのデメリット
デメリット1:利用できる地域が限定される
都市ガスの供給は都市部や人口密集地域に限定されており、農村部や遠隔地域では利用できません。これは都市ガスの供給網を敷くのに高額な費用がかかるためです。つまり、その費用に見合う収益が見込める地域でしか整備されないのです。
デメリット2:災害復旧に時間がかかりやすい
都市ガスの供給網であるパイプラインは地域全体で繋がっているため、災害時には復旧に時間がかかることがあります。例えば地震によりパイプラインの損傷があった場合、複数の家庭に供給ができなくなり、また修理に多くの労力・時間が必要になります。
都市ガスの利用方法
都市ガスを使用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。以下に、主な使用条件を説明します。
- 供給エリア
- 設備要件
- 住宅種別
供給エリア:
住んでいる地域が都市ガスの供給エリアに含まれているかを確認する必要があります。地方の市町村など供給エリア外では、都市ガスを利用することができません。また、供給エリア内でも、前面道路に都市ガスの本管が通っているかどうかを確認する必要があります。ガス管が存在しない場合、都市ガスの引き込みができません。
なお、自宅が都市ガスの供給エリアに含まれているか確認するには、日本ガス協会のガス事業者検索を利用すると便利です。
設備要件:
ガスを使用するためにはガスメーターが必要です。新たに都市ガスを引き込む場合、ガス会社に依頼してメーターを設置してもらう必要があります。また、ガスを使用する場所までの配管工事が必要です。新築の場合は建物の設計段階で配管を考慮することが一般的ですが、既存の建物に後から引き込む場合は、引き込み工事が必要になります。
住宅種別:
マンションやアパートなどの集合住宅では、建物全体で都市ガスを利用するか、プロパンガスを利用するかが決まります。個別に選択することは基本的にできません。一戸建ての場合は、エリアや設備の条件を満たすことで都市ガスの導入が可能です。特に引き込み工事が可能かどうかが重要です。
都市ガスの引き込み工事について
都市ガスの引き込み工事は、公道に敷設されたガス導管から自宅までガスを供給するための配管を設置する作業です。一般的な費用は10万~15万円程度ですが、周辺の環境などによって変動します。なお、ガス機器の部品交換や買い替えが必要な場合はさらに費用がかかります。
ガス機器の交換・買い替えについて
都市ガスとプロパンガス(LPガス)のガス機器は互換性がありません。給湯器やガスコンロなどは都市ガスに対応したものを設置する必要があります。ガス機器にはガスの種類が書かれたステッカーが貼ってあり、都市ガスに対応したものは「12A」「13A」「都市ガス用」などと表記されています。
まとめ
ここまでの内容について、簡単に整理しておきましょう。
都市ガスとは? |
---|
都市ガスは主に天然ガスを原料として製造されるエネルギーです。また、地下に張り巡らされたガス導管を通じて主に都市部で暮らす人々に供給されています。 |
都市ガスとプロパンガスの違いとは? |
都市ガスとプロパンガスの違いは、原料・供給方法・料金などです。ちなみに料金については、都市ガスは公共料金ですがプロパンガスは自由料金です。 |
都市ガスのメリットとデメリットとは? |
都市ガスのメリットは、料金が安いことや環境にやさしいことです。一方デメリットは、利用できる地域が限定されることや、災害復旧に時間がかかることです。 |