高い冷暖房効果やCO2排出量の削減など多くのメリットを持つガスエアコンですが、導入費用や注意点について十分に理解されていないのが現状かもしれません。

本記事では、ガスエアコンのメリット・デメリットを徹底解説し、あらゆる側面からガスエアコンについて理解を深めます。エアコンの買い替えや新規導入をご検討の方々に役立つ情報をお届けできれば幸いです。

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ガス料金を比較したい物件は?

Step2

どちらでガスを使用しますか?

  • ガスエアコンは高額な初期費用がかかりますが、電気エアコンよりランニングコストが安い傾向があります。
  • ガスエアコンは業務用の空調システムです。家庭用も提供されていましたが、現在は製造中止となっています。

ガスエアコン(GHP)とは

ガスエアコンは、ガスエンジンを使用してヒートポンプサイクルを駆動する空調システムです。GHPは「Gas Heat Pump(ガスヒートポンプ)」の略称で、ガスエアコンを指す一般的な用語です。

ガスエアコンの仕組みは、ガスエンジンで圧縮機を駆動し、冷媒の液化と気化を繰り返すことで冷暖房を行います。これにより、電気エアコンと比べて建物全体の電力消費量を大幅に削減し、電気料金の低減につながります。

ガスエアコンの用途は、主に業務用です。例えばショッピングモールやオフィスビル、学校や病院、工場や飲食店などに導入されています。ちなみに、ガスエアコンは電気エアコンに比べて設置コストが高額になります。そのため一般家庭では導入が難しく、家庭用のガスエアコンは製造中止となっています。

ガスエアコンのメリット

ガスエアコンには4つの主要なメリットがあります。

  • 電気代が安くなる
  • 立ち上がりが早い(急速暖房)
  • 停電時でも使える
  • 環境負荷が少ない

それぞれのメリットについて詳しく説明します。

メリット①電気代が安くなる

ガスエアコンはガスのエネルギーを使って冷暖房を行うため、電気の使用量を大幅に抑えることができます。これにより、特に大規模施設では契約電力を低く抑えることが可能となり、基本料金を含めた電気代の大幅な削減につながります。電力需要が高い夏季や冬季は、この効果が顕著に現れます。

メリット②立ち上がりが早い(急速暖房)

ガスエアコンはエンジンの廃熱を利用することで、起動直後から高い暖房能力を発揮します。そのため、朝一番の立ち上げ時や、間欠運転を行う施設で非常に便利です。特に寒冷地では、室温を素早く快適なレベルまで上げる能力は大きなメリットといえます。

メリット③停電時でも使える

ガスエアコンは電力に頼らず運転できるため、停電時でもガス供給が維持されていれば使用可能です。これは、災害時の避難所や医療施設などで重要な役割を果たします。また、BCP(事業継続計画)の観点からも、電力に依存しない空調システムとして評価されています。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、企業や組織が災害・事故・サイバー攻撃などの予期しない事態に直面した際に、事業を継続するための計画です。BCPは業務の中断を最小限に抑え、迅速に復旧するためのプロセスと手順を明確にするものです。

メリット④環境負荷が少ない

ガスエアコンは地球温暖化係数が低い自然冷媒を使用することが一般的です。一方、電気エアコンではフロン系冷媒を使用することが多く、これは地球温暖化に寄与する可能性があります。

また、ガスエアコンは化石燃料を直接利用するため、エネルギー変換の効率が高いです。一方電気を介してエネルギーを使用すると、発電所での発電と送電によるエネルギーロスが発生します。燃料を直接利用する方が効率的であり、環境への負荷を低減できます。

また、ガスエアコンを利用することで電力の使用量が減少し、電力需要ピーク時における電力消費を抑えることができます。これにより、火力発電所の稼働を抑制し、電力供給の安定化とCO2排出量の削減に貢献します。

ガスエアコンのデメリット

同様にガスエアコンのデメリットも挙げてみます。

  • 導入費用が高い
  • 設置スペースを取られる
  • メンテナンスに手間と費用がかかる
  • ランニングコストが変動しやすい

それぞれのデメリットについて詳しく説明します。

デメリット①導入費用が高い

ガスエアコンの設備は電気エアコンよりも高価です。またガス配管工事が必要なため、設置工事費用が発生します。既存の建物にガスエアコンを導入する場合、大規模な改修工事が必要になることがあり、さらに工事費用がかかるかもしれません。これらの高い初期投資は大きな障壁となる可能性があります。

デメリット②設置スペースを取られる

ガスエアコンの室外機は、ガスエンジンや熱交換器などの機器が内蔵されているため、一般的に電気エアコンよりも大きくなります。したがって広い設置スペースが必要ですが、都市部の狭小地やスペースが限られている商業施設では難しい場合があります。

デメリット③メンテナンスに手間と費用がかかる

ガスエアコンには定期点検や部品交換が必要です。具体的には、オイル交換・フィルター清掃・エンジン調整などの作業が定期的に発生します。これらのメンテナンス作業には専門知識が必要で、専門業者への依頼が必須です。結果として、電気エアコンと比べてメンテナンスの頻度が高く、その費用も高額になる傾向があります。

デメリット④ランニングコストが変動しやすい

ガス料金は電気料金に比べて価格変動が大きい傾向があります。特にプロパンガスは自由料金制であり、ガス会社によって価格が大きく変動することがあります。都市ガスの場合も、原油価格の変動に連動して料金が変わることがあります。ガス料金の上昇時には、想定しているコストの削減効果が薄れる可能性があります。

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どちらでガスを使用しますか?

電気vsガス!エアコンの費用比較

電気対ガス

電気エアコンとガスエアコンの費用を比較するために、導入費用やランニングコストを試算してみます。それぞれの15年間の総コストは以下のとおりです。

電気エアコン(10馬力×2):
導入費用77万円 + (年間ランニング35万円 + メンテナンス4.5万円) × 15年 = 669.5万円

ガスエアコン(20馬力):
導入費用220万円 + (年間ランニング22万円 + メンテナンス9万円) × 15年 = 685万円

参照:公立学校18教室ランニングコスト試算例

このように、導入費用はガスエアコンの方が高いですが、長期的には電気エアコンと同等のコストになります。また、ガスエアコンは寿命が長いため、20年以上の長期使用を前提とする場合は有利になります。

ただし、この比較はあくまで一般的な傾向を示すものです。実際の導入を検討する際は、具体的な機種や地域の料金体系、使用パターンなどに基づいた詳細な試算が必要です。

ガスエアコンの導入費用

ガスエアコンの導入費用は複数の要素で構成されます。一般的な内訳は以下のとおりです。

項目金額
直接工事費約330万円
共通仮設費約16万円
現場管理費約110万円
一般管理費約73万円
合計(税込)約582万円

直接工事費は、ガスエアコン設置工事に直接関わる費用を指します。具体的には、ガスエアコン本体・配管材料・冷媒ガス等の材料費、設置作業を行う技術者や作業員の人件費、工具や機材のレンタル料および運搬費などが含まれます。

共通仮設費は、工事全体に共通して必要となる仮設物や準備作業に関する費用です。具体的には、作業員の安全装備、仮設電気・水道設備、養生材料(床や壁の保護材料)などの費用が含まれます。

現場管理費は、工事現場の運営・管理に必要な費用です。具体的には、現場監督者の人件費や各種書類の作成費、事務用品費や通信費などが含まれます。

一般管理費は、工事に間接的に関わる会社全体の運営費用の一部を工事費に計上したものです。具体的には、本社の従業員給与や広告宣伝費、保険料などが含まれます。

以上より、ガスエアコンの導入費用は総額で600万円程度となります。ただし具体的な金額は、建物の構造や設置台数、本体機種などによって大きく変動します。

ガスエアコンの選び方

選択

ガスエアコンを選ぶ際は、どのような選択肢があるのかを知るために、取扱メーカーを確認しておくことが必要です。また、設置方法を把握しておくことで製品比較がしやすくなります。以下にこれらを説明します。

ガスエアコンの取扱メーカー

スエアコンの主要なメーカーは以下のとおりです。

  • アイシン精機
  • ダイキン工業
  • パナソニック
  • 三菱重工冷熱
  • ヤンマーエネルギーシステム

では各メーカーの特徴を紹介します。

アイシン精機

アイシン精機はトヨタグループの一員です。自動車部品で培った技術力を活かした高品質なガスエアコンを提供しています。高効率なガスエンジンを採用した省エネ性能に定評があり、2020年には省エネ大賞を受賞しています。

ダイキン工業

ダイキン工業は空調業界のリーディングカンパニーとして、豊富な経験と技術力を持っています。ガスエアコンだけでなく電気エアコンも製造しており、幅広い製品ラインナップを持っているため、さまざまな顧客のニーズに対応することができます。

パナソニック

パナソニックは電気機器全般で広範な製品ラインナップを持つ、日本有数の総合電機メーカーです。同社のガスエアコンはマルチエアコンシステムに対応しているため、使用環境に合わせて空調システムの規模を調節することができます。

三菱重工冷熱

三菱重工冷熱は重工業分野で培った高耐久性技術が強みです。耐久性に優れたガスエンジンを採用し、長寿命のガスエアコンを提供しています。また業務用製品に特化しているため、大規模な施設向けのガスエアコンを多数取り扱っています。

ヤンマーエネルギーシステム

ヤンマーエネルギーシステムはエンジン技術に強みを持つヤンマーグループの一員です。農業機械や船舶用エンジンで培った技術力を活かし、自社開発の高効率エンジンを採用したガスエアコンを提供しています。

以上5つのメーカーは「GHP XAIR」シリーズの製造・販売体制を整え、業界全体でGHP技術の向上と普及に取り組んでいます。各社は独自の強みを活かしながら、省エネ性や耐久性の向上、多様な用途への対応など、ガスエアコン市場の発展に貢献しています。

ガスエアコンの設置方法

実際にガスエアコンを設置するまでの流れを紹介します。具体的には以下のようなステップが必要になります。

ガスエアコンの設置手順

①使用環境の確認:
どのような場所で使用するかを明確にする。

②必要な性能の特定:
設置場所の広さや使用目的に応じて必要な冷暖房能力を決定する。

③予算の設定:
初期費用とランニングコストを考慮して予算を設定する。

④製品の比較:
各メーカーの製品を比較し、エネルギー効率・メンテナンス性・保証内容などを確認する。

⑤専門家のアドバイス:
施工業者や販売店に相談し、最適な機種や設置方法についてアドバイスを受ける。

⑥見積もりの取得:
複数の業者から見積もりを取り、比較検討する。

⑦設置とアフターケアの確認:
設置後のメンテナンスやサポート体制についても確認しておく。

このように、ガスエアコンを選ぶ際には使用環境・冷暖房能力・省エネ性能・設置費用・ランニングコストなどを総合的に考慮します。そして複数の業者から見積もりを取り、メンテンナンスなどのアフターサービスを含め最適な条件で設置することが大切です。

ガスエアコンは高額な初期費用がかかります。後悔することがないように、以上の点に注意しながら慎重に選んでください。

プロパンガス料金比較でガス代をお得に!

Step1

ガス料金を比較したい物件は?

Step2

どちらでガスを使用しますか?

まとめ

ここまでの内容について、簡単に整理しておきましょう。

ガスエアコンの仕組みとは?
ガスエアコンは、ガスエンジンを使用してヒートポンプサイクルを駆動する冷暖房システムです。電気エアコンと比べて建物全体の電力消費量を大幅に削減し、電気料金の低減につながります。
ガスエアコンのメリット・デメリットとは?
ガスエアコンのメリットは「電気代が安くなる」「立ち上がりが早い」「停電時でも使える」「環境負荷が少ない」など。一方デメリットは「導入費用が高い」「設置スペースを取られる」「メンテナンスに手間と費用がかかる」「ランニングコストが変動しやすい」などです。
ガスエアコンの節約効果とは?
ガスエアコンは電気エアコンと比べて導入費用が高いですが、ランニングコストが安いため、長期的には同等のコストになります。なお、20年以上の長期使用を前提とする場合は、長寿命のガスエアコンが有利になります。
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エネルギー事業部責任者

今村 一優

新卒で太陽光発電事業を行うベンチャー企業に入社。商社部門の仲卸営業として、国内外の太陽光発電メーカーの商品を取り扱い、全国の販売施工会社を担当。その後、太陽光発電の一括見積もりサイト運営にも携わる。
2015年にはプロパンガス料金比較サービスenepi(エネピ)の立ち上げを行い、数万人のプロパンガス代削減のサポートをするサービスへ成長させる。
エネルギー領域で10年以上携わった経験と知識を活かして、じげんエネルギー事業のマネージャーにて事業開発を行なっている。

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ライター

藤巻 創

電気・プロパンガスに関する記事のライティングを担当。
制作ポリシーに基づいてエネルギー全般の記事作成・管理を行う。