神奈川県では、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)の導入促進のための
ビジネスモデルの公募をしています。
最近話題になっているEMSとは一体何でしょうか、そしてEMSによって私達の暮らしはどのように変わるのでしょうか。
EMS(エネルギー・マネジメント・システム)とは
最近、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)という言葉を
よく聞くようになりましたが、その内容を知っている人は
まだ少ないのではないでしょうか。
エネルギー・マネジメント・システムはその名の通り、
電気・ガス・熱などのエネルギー消費を管理するシステムのことです。
建物のエネルギーの消費を、設備・機器などの使用区分ごとに
リアルタイムで計測・監視し、最適なエネルギー消費となるように、
機器をコントロールする装置です。
EMSは、コントロールする対象によって様々な名称があり、
ビルの場合はBEMS(ビルディング・エネルギー・マネジメントシステム)、
住宅の場合はHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメントシステム)、
マンションの場合はMEMS(マンション・エネルギー・マネジメントシステム)
と呼ばれています。
最近取りざたされているエネルギーの「見える化」とは、主にこのEMSを使った活動のことを指しています。
神奈川県が公募したEMSサービス実証事業とは
神奈川県では、平成26,27年度に
「地域課題対応型EMSサービス実証事業」を公募しました。
この実証事業は、上記のHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメントシステム)によって
「見える化」される住宅の電力などのエネルギーの使用状況のデータを使って、
節電のアドバイスや、高齢者の見守りなどの生活支援サービスがビジネスとして
普及することを実証する事業です。
具体的には、神奈川県がEMS(主にHEMS)を活用したビジネスモデルを事業者から公募し、
選ばれた事業者に対してビジネスに必要な費用を県が補助します。
事業では、神奈川県内の指定された地域の住宅約30戸に対して、HEMSを実際に設置して、サービスを提供しました。
EMSによるサービスとは
平成26,27年の公募では、「エネルギー管理サービス」「児童見守りサービス」および「高齢者見守りサービス」のビジネスモデルが提案されました。
それらを順番に見ていきましょう。
まずは、「エネルギー管理サービス」です。
HEMSで監視している電力使用データから、電力使用量が、各住宅が設定している節電目標に近づくと、その旨のメールが家族に届けられるというものです。
また、より積極的に節電のためのアドバイスを送るサービスもあります。
「児童見守りサービス」では、児童が帰宅して家の家電を使うと、住宅の電気の使用量が大きく増えます。
これを利用して、児童の帰宅予定時間帯に電力の使用量が増えると、
HEMSがそれを検知して、子供の帰宅を知らせるメールが親に送られるというものです。
「高齢者見守りサービス」では、高齢者一人暮らしの住宅の電気、ガス、水道の使用量を遠隔で監視し、
在宅している時間帯の電力などの使用量がほとんど発生しない状況が続いた場合に、その旨を高齢者の家族にメールで伝えたり、
見守り担当者が実際に住宅を訪問したりするというものです。
また、住宅内にセンサーを設置して、高齢者の様子を直接監視して見守るというサービスもあります。
実証事業で明らかになったEMSのメリットと課題
実証事業でHEMSを設置した家庭からのサービスへの評価は概ね良好でした。
特に、高齢者見守りサービスに対しての評価と将来の必要性を感じている利用者が多くみられました。
エネルギー管理サービスについては、サービスによる省エネ効果だけでなく、
HEMSを設置した事による住民の意識の変化での省エネ(節電)効果も見られたと考えられています。
課題は、そのサービスを受けるために必要なHEMSの設置費用とサービス費用が、住民が許容する額とは現在では額の開きがあるという点です。
この問題は、今後HEMSが普及することで、ある程度は解決していくでしょう。
EMSサービスの今後
EMSを利用したサービスについては、今後普及が期待できるものもあります。
今後EMSサービスが普及するかどうかは、機器・サービス費をどのように住民が許容する範囲まで下げるかにかかっています。
ある程度のEMSが導入されれば、機器・サービスの価格は劇的に下がります。そこまでの普及に対しては、国自治体等の支援が待たれています。