灯油ボイラーとは
灯油ボイラーとは主には石油給湯器のことです。
燃料に灯油を使用して、水や液体を温めて使用するための機材を指します。
形は円筒型や角型の機材のほか、
住宅で使う壁面取付型の瞬間湯沸かし器が
大きくなったようなものの中にも、
ガスではなく灯油タイプが存在します。
寒冷地の住宅やマンションなどでは、
ランニングコストが安く抑えられるのが特徴です。
冬季間もプロパンガスの入れ替えのために、
雪がたくさん積もり、氷のように硬くなった軒下を
掘り出すリスクがない灯油タンクは
屋外に備え付けているところがほとんどです。
お台所や風呂場の湯沸かし器のほか、
床暖房や壁面暖房、セントラルヒーティング、
屋外の融雪機などに接続されおり、
シーズンには24時間稼働しているものも存在します。
また、一般家庭用として数はあまり多くありませんが、
ボイラーを用いての「ヒートポンプ」と呼ばれる、
気体の圧縮・膨張と熱交換を組み合わせて
暖房や冷房、給湯を行う汎用型の機材もあります。
灯油ボイラーの種類

石油ボイラーでも、
温まったお湯をメインに「給湯目的」で使用するものから、
ビルや住宅の「暖房」のために利用される場合など、幅広いです。
「暖房」のための場合、水や不凍液などを密閉状態で加熱して利用するための物や、
熱交換で外気から暖かい空気や冷えた空気を取り込むための
「ヒートポンプ」や「ヒートポンプと給湯を兼ねたもの」などが
存在しており、オフィスビルの地下や、住宅内などに多数設置されています。
ガスなどに比べて灯油は単位容積あたりの
エネルギー量が大きいため、運搬にかかるコストが小さく、
ボイラーの種類によっては灯油のほか、
非常に近い構造でコストが割安なA重油(※1)なども
使用できるタイプがあります。
(※1)A重油…軽油の種類。
灯油ボイラーの仕組み

給湯目的では、
「水道直圧式」と呼ばれる、ボイラー内にある管を
バーナーで温めるタイプがあります。
お宅へ水道を引き込んでいる場所から、
お湯の蛇口の中間地点に設置するタイプで、
多少調整されることはありますが、
水道管内の圧力をほぼそのまま生かしています。
機材の内部に熱を受けやすい羽や
細かい管が張り巡らされており、
バーナーからの熱を無駄にしないで
利用しやすく工夫されています。
都度、必要なだけお湯を沸かすので、
灯油が無駄にならず、
また上のフロアでお湯を使うときにも、
ボイラーの先に届く管内の水圧を十分確保することが可能です。
「減圧式」といわれるタイプでは、
一般的に内部にタンクを持ち、
それをバーナーで温めています。
こちらでは、常に一定以上の水を
タンク内に貯めて温めるので温度が一定し、
まとめて使うときにもすぐにお湯が出せます。
山間部などで、家屋内に入ってくる水の水道圧が
一定でないところでも、空焚きもなく使用できます。
灯油ボイラーの使い方

現在、家庭用機種の新しい設計年代のものでは、
ほとんどの場合、
①一度火を入れる
②電気や電池によって自動的に種火が維持される
③ものによっては使用の都度、新たに着火装置が火を起こす
④灯油を供給し炎を出す
⑤瞬間湯沸かし器と同じでボタンを押したら蛇口をあけるだけです。
旧(ふる)い住宅用機種や、
大型ビルなどに用いられる灯油ボイラーの場合、
設置し一度火をいれたら、後は種火を切らさないよう管理する必要がある物も存在します。
万が一、水が無いのに空焚きを続けてしまえば
「水道直圧式」「減圧式」ともに、
機材の内部が傷んでしまう恐れがありますが、
通常は安全装置や警告が働きます。
また、灯油が切れてしまえば、
大型の減圧式ボイラーでは、
種火からタンク内全体の温度調節ができる
大きな炎と蓄熱状態になるまでに、
かなり時間が必要となります。
大型ビルに用いられているボイラーでは、
取り扱いの国家資格をもった専属の係員などが、
運用や整備の業務にあたります。
灯油ボイラーのメリット

【メリット1】省スペースで長期間利用可能
灯油ボイラーはなんといっても、
1容積あたりの熱量が大きいため、
灯油を貯めておく場所、すなわち灯油タンクが
小さくても長い期間使えます。
【メリット2】ガス給湯器よりも安く利用できる
またガスと比較して、
住宅で使用する際には値段が安い地域が多いことも魅力です。
【メリット3】取り扱いがしやすい
ガス給湯器の場合、
ボイラー機材でガスが漏れると、
配管や床壁を伝って、居住スペースにガスが侵入する危険性があります。
それによる一酸化中毒事故や
爆発などが見られるケースもあります。
ですが灯油の場合、
ボイラー本体や宅内で灯油が漏れる事故が
比較的少ない点も、扱いやすさにつながっています。
灯油ボイラーのデメリット
【デメリット1】燃料供給タンクのためのスペース確保が必須
ガスボイラーの場合、
都市ガスなら住宅や建物周りに
燃料供給用のボンベやタンクを設置する必要はありません。
ですが灯油ボイラーの場合、
屋内外のどこかには燃料供給用のタンクを
設置する必要があります。
また、定められた一定以上の容量のタンクを設置する場合、資格が必要となります。
【デメリット2】灯油の値動きに左右される
灯油の場合、薪などとは異なり、
ガソリンやガスなど同様に値動きがあるケースもあります。
オイルショックなどでは
非常に燃料価格が高騰したこともありますので、
ランニングコストが不安定です。
【デメリット3】灯油を安定して確保できる状態をキープしなければならない
あまり灯油を燃料として使用していない地域では、
灯油を多く使用する秋冬の季節以外、
使用する自宅や建物周りに
灯油を配送してくれる業者を確保することが必要となります。
細い山道などを持つエリアでは、
小型の配送車のあるガソリンスタンドがあることが、
よりお得な灯油利用の1つの目安になります。
灯油ボイラーの価格相場はどれくらい?

住宅用と大型施設や特定目的のボイラーなどの種類によって異なります。
一般的な住宅用で見ていくと・・・
給湯機タイプの中でも、
追い炊き機能がついているものと
単に給湯だけを行うものに分かれます。
給湯のみのタイプ:50,000~100,000円を下回る程度
追い炊き機能付き:100,000~150,000円前後
ヒートポンプタイプ:150,000~250,000円程度
と、機能にも伴って、かなり価格にも差があります。
主要メーカーが取り扱っている灯油ボイラーの価格相場
住宅用で、かつシンプルに給湯に的を絞った「灯油ボイラー」の大手メーカーでは、
例えば…
・長府 50,000~200,000円
・ノーリツ 50,000~380,000円
・パロマ 27,5000円(1機種連結型)
・コロナ 50,000~450,000円
となっています。
値段の幅は、実売と希望小売価格の差のほか、
主には追炊機能やリモコン、給湯能力によるものです。
耐用年数はどれくらいか

住宅用で、かつシンプルに給湯に的を絞った「灯油ボイラー」では、
2009年(平成21年)4月1日から施行された経済産業省の
「長期使用製品安全点検制度」の下で製造販売されています。
通常、本体のフロントカバー部分に、次のような表示が見られます。
・「特定保守製品」表示
・型式
・特定製造事業者等名
・製造年月
・設計標準使用期間
・点検期間
・問合せ連絡先
各メーカーとも、設計標準使用期間として10年を算定しています。
これを過ぎると経年劣化により安全上の支障が生ずる恐れがあるほか、
美容室等比較的頻繁に使用するところでは、
設計標準試用期間よりも早期に経年劣化が起こる可能性が
非常に高くなっています。
灯油ボイラーの取り付け方法と工費費用

灯油ボイラーの取り付けに際しては、
・マンションや住宅に既に灯油配管や水道配管があるか
・近隣地面に灯油タンク設置場所があるか
・屋内に灯油タンク設置可能なスペースと壁床素材などで適切な場所が確保されているか
・ボイラーの重量や取り付け位置に十分な強度があるか
などによっても大きく異なってきます。
現在灯油ボイラーを既に利用されている方が、
灯油ボイラー本体だけを新たなものに交換するケースでは、
地域や季節にもよりますが30,000~60,000円と幅が見られます。
給水管はすでにあり、
屋内灯油タンクのみで足りる場合でも、
タンクサイズや形状により料金には幅があります。
新たに配管を行う場合、
マンションなどでは配管自体が行えず、
最悪ではクローゼットなどから加工して
新たに設置場所を設ける必要があるケースもあります。
こういったケースでは、
室内造作分と配管分の双方で、
さらに工事費が発生します。
灯油ボイラーのランニングコスト
10年ほど前には非常に割高だった灯油も、
この2~3年で価格は低下、安定傾向にあります。
2017年10月23日現在の東京都区部の
灯油の店頭現金価格は1,578円です。
急な寒さがあり、一時的に需要が増していますが、
2016年12月以来、ほぼ横ばいという状況です。
シャワーを良く使う大きな子供を持つ4人世帯で、
追い炊きなし、床暖房やセントラルヒーティング無しで
灯油ボイラーでの生活を続けるとして
ランニングコストがどれくらいになるか計算してみます。
水道の水温が通年で18℃、石油の単価を1Lあたり85円と仮定した場合、
年間コストは約53,120円となります。
計算式は以下の通りです。
風呂のお湯200L×(42-18℃)
シャワー5min/人×12L/min×4人=240L×(40-18℃)
洗面台利用8L/min×2min/人×4人=64L×(40-18℃)
台所6L/min×3min/回×3回=54L×(37-18℃)
給湯熱量12504kcal/日×365日/年4.56Gcal/年
灯油ボイラーは定期的なお手入れや点検方法

ガスボイラーでは、
以前からガス設備に対する点検などが行われてきました。
ガスボイラーや石油ボイラー、瞬間湯沸かし器、
風呂釜や、一部の石油暖房機などが
非常に古くなってから、あとに出火や爆発、
不完全燃焼による中毒などを起こす事故が相次ぎした。
それを受けて、2009年(平成21年)4月1日から
施行された経済産業省の長期使用製品安全点検制度に基づく
ユーザと製造輸入販売者双方に点検や保守が求められています。
それぞれのこの制度の下で製造出荷されている、
『特定保守製品』と呼ばれるものには、
その本体に『特定保守製品』という表示があります。
購入時にユーザーはがきなどで、
メーカーに所有者登録を促しています。
該当する場合、
法律に基づく「法定点検」があり、
ユーザーがお金を払って点検してもらうことが
求められています。
ボイラーの事故は屋外ばかりでなく
屋内での人命や周辺家屋に及ぶこともあります。
そうならないように主に以下についての点検を行っていきます。
①燃料漏れや水漏れ
②外形変化
③燃焼状態
④異音が無いか
⑤設置場所周りに火事や事故の可能性がありそうな変化の確認
法律で定められた時期に行っています。
これより以前に設置されたボイラーでは
こうした制度はありませんが、
事故防止のために広く点検が呼びかけられています。
灯油ボイラーが油漏れした場合の対処方法

灯油ボイラーの場合、
本体設置場所での油臭さや、タンクからの減りの早さ、
また給油で訪れてくれるタンクローリーでの
宅配スタンドなどが、油漏れ発生を確認することが多くあります。
そのため、外付けや屋内向けの灯油タンクを利用している
住宅や建物では、安いからと言って頻繁に灯油を宅配してくれる
ガソリンスタンドを乗り換えるのではなく、
シーズンごとなど期間を定めて継続的に利用することで、
早期の油漏れ発見につながりやすくなります。
油漏れの箇所にもよって対応方法はことなりますが、
初動は同じです。
慌てず、まずはボイラーをOFFに。
給油ノズルをタンク側、機材側とも閉めます。
本体側のときには、
ここでメーカーや機材設置会社に連絡をしましょう。
水抜きの指示があればそれに従います。
タンク側の時には、
ここでガソリンスタンドなどに連絡をしましょう。
漏れが発生した時期の特定や、
修繕自体を行ってくれるところや、
対応できる業者を紹介してくれる所などがあります。
灯油漏れでも、屋内タンクやコンクリート床面設置タンクへの漏れの場合、気化した灯油に引火することがあります。技術や資格を持つ人が到着するまで、近くでの直火使用は控えましょう
灯油ボイラーが故障した場合の対処方法
通常、灯油ボイラーを販売しているお店や、
設置業者、メーカーなどに、電話やメールで問い合わせをして
修理が必要な故障かどうかを案内してもらいましょう。
または、自宅近隣にあるメーカー提携業者などに
電話をして来訪してもらい、
故障個所確認と修理などを行ってもらいます。
着火装置など、
多くのご家庭で頻繁に交換の発生するパーツの場合には、
即日修理可能なこともありますが、
あまり故障が見られない箇所などでは、
修理用パーツの取り寄せを含めて、
数日から数週間要するケースもあります。
火が付きにくくなってきた、
いつもと違う音や炎の形状が確認できるときは、
明らかに使用に差支えがある状態になる前に、
販売しているお店や設置業者・メーカーなどへ
電話やメールで問い合わせをしておきましょう。
まとめ
ここまでの内容について、簡単に整理しておきましょう。
灯油ボイラー(石油給湯器)とは何ですか?使用のメリットを教えてください。 |
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灯油ボイラーとは主には石油給湯器のことです。 燃料に灯油を使用して、水や液体を温めて使用するための機材を指します。 下記のようなメリットがあります。 ①省スペースで長期間利用が可能 ②ガス給湯器よりも安く利用できる ③取り扱いがしやすい |
灯油ボイラー(石油給湯器)のデメリットはありますか? |
灯油ボイラー(石油給湯器)には下記のようなデメリットもあります。 ①燃料供給タンクのためのスペース確保が必須 ②灯油の値動きに左右される ③灯油を安定して確保できる状態をキープしなければならない |
灯油ボイラー(石油給湯器)の値段、相場はどれくらいですか? |
住宅用と大型施設や特定目的のボイラーなどの種類によって異なります。 また、機能にも伴って、かなり価格にも差があります。 (一般的な住宅用の場合) 給湯のみのタイプ:50,000~100,000円を下回る程度 追い炊き機能付き:100,000~150,000円前後 ヒートポンプタイプ:150,000~250,000円程度 |
灯油ボイラーについてご紹介してきましたが、
検討の参考になりましたでしょうか。
ボイラーの中でも単位容積あたりの熱量が高く、
万が一エリア一帯が天災で被災しても、
都市ガスやプロパンガスのような点検巡回や
復旧作業を待たずに使用できる灯油ボイラーは非常に便利な存在です。
取り扱いも楽なので、使用した分だけ無駄なく使えるタイプが多い
石油ボイラーは、安全と節約をともに備えた暮らしの強い味方です。
既に設置している方はこれからの時期に備えて点検を、
これから設置を検討している方はメーカー比較などをし、
納得のいく導入をしてくださいね。