電力自由化後の海外での事例とホワイトラベルの可能性
たとえば、電力自由化の先進国の1つであるイギリスでは、1998年に家庭向けの電力小売自由化が行われています。イギリスでは、電力の販売会社が約40社、料金プランは1,000プラン程あると言われています。プランで興味深い点として、単純に価格を低くするだけではなく(イギリスの場合、電力小売自由化によって、むしろ電気料金が値上がりしています!)、たとえばマイレージやショッピングのポイントを付与したり、電力需要が逼迫するピーク時に節電した需要家に割引をしたり(デマンドレスポンスと呼ばれています)、あるいは社会的弱者に対する割引・各種サービスの提供といったプログラムも行われています。
特に、イギリスでは電力版OEM(相手先ブランドによる製品製造)とも言える、「ホワイトラベル」と呼ばれる電力の供給形態が盛んになっており、全体の10~20%がホワイトラベルの顧客と言われています。代表的な事例としては、小売大手のMarks & Spencer(イギリスの高級スーパーです。日本で言う紀伊國屋のイメージでしょうか。)が販売するM & S Energyという電気料金プランです。これは、SSEというイギリスの旧国有電力会社が電力の供給源となっています。SSEとしては、消費者にとって身近でイメージの良いMarks & Spencerとタッグを組んで販売することで、顧客の維持・獲得を有効にしています。
また、Marks & Spencerとしては、契約を獲得する際にSSEから支払われるインセンティブの他、顧客接点の強化という目的も満たすことができ、双方にとってメリットのあるアライアンスとなっています。また、顧客としては、M & S Energyへの新規契約の際、Marks & Spencerのクーポン券を付与される他、電気料金が通常より5%程安価になるといったメリットを享受できます。
日本でも新電力による電力自由化は行われています!
今後の新電力の料金プラン予想
特に、電気料金と通信料金のセット売りは、今後のスタンダードとなることでしょう。東京電力とソフトバンク、関西電力とKDDI、中部電力とNTTドコモがそれぞれ提携を発表しており、また通信事業者以外にも、多くの消費者を抱えるサービスを有する企業(リクルートホールディングス、T-POINTを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ等)との提携が進んできています。従来の電力会社は、自社の電力管内の顧客の維持に加えて、他社の電力管内の顧客の新規獲得に向けて、まさに業界の垣根を超えて、様々な魅力的なプランを提示することが予想されます。
同時に、新電力各社は価格面での安さを武器に、いかに電力の販売シェアを広げるかを画策していることでしょう。とは言え、下図のとおり、新電力の販売電力量のシェアは、まだ5%に満たない状況です。小売り自由化を迎えた際、このシェアがどの程度伸びるか、注目に値します。