一般的に、プロパンガスは都市ガスと比較して料金が割高になります。もしご自宅が都市ガスの供給エリア内であれば、エネルギー源を切り替えることで、光熱費を大きく削減できる可能性があります。しかし、切り替えには初期費用がかかり、手続きも複雑そうに見えます。また、エリア外や賃貸物件にお住まいの場合、「自分には関係ない」と諦めてはいないでしょうか。

この記事は、プロパンガスを利用するすべての方々に向けて、ご家庭の状況に合わせた最も経済的な選択肢を提示するためのガイドです。この記事を読むことで、ガス業界の慣行や料金体系に関する専門的な知識が身につき、事実に基づいた最適な決断を下す準備ができるでしょう。

この記事でわかること

  • 都市ガスへ切り替え条件:ご自宅が都市ガス供給エリアであること
  • 具体的な手順や注意点:①供給エリアの確認②ガス会社へ見積もりを依頼③ガス配管工事の実施④開通作業とガス機器の交換(プロパンガス機器は買い替えが必須)
  • 申し込みから開通までの期間:通常1ヶ月から2ヶ月程度
  • 切り替え費用の相場:総額で25万円〜45万円程度が目安
  • 都市ガスが使えない場合の対策:プロパンガス会社を乗り換える
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どちらでガスを使用しますか?

プロパンガスから都市ガスで料金はどれだけ安くなる?

まずは、プロパンガスから都市ガスに切り替えることで「結局、いくら安くなるのか?」という点について説明します。結論から言えば、同じ量の熱エネルギーを使った場合、都市ガスはプロパンガスよりも大幅に安くなるケースがほとんどです。一般的な家庭をモデルに、どれくらいの差が生まれるかを見てみましょう。

世帯人数プロパンガス月額料金都市ガス月額料金差額
1人暮らし (5m³使用)約 5500円約 3000円約 -2500円
4人家族 (20m³使用)約 15500円約 8500円約 -7000円

上記は全国の平均的な料金を基にしたシミュレーションです 。お住まいの地域や契約するガス会社、使用量によって金額は大きく変動します。とはいえ、この表を見れば、年間で数万円から10万円近い節約が期待できることがわかります。この差額は、家計にとって決して小さなものではありません。

なぜ都市ガスの方が安いのか?

都市ガスが安い理由は、主に供給方法と料金制度にあります。

  • 供給方法の違い:都市ガスは道路の下に通されたガス管を通じて各家庭に直接供給されるため、人件費や配送コストを抑えられます。一方、プロパンガスはガスボンベを各家庭に配送する必要があり、その分のコストが料金に上乗せされます。
  • 料金制度の違い:都市ガスは公共料金として国の認可が必要なため、価格が安定しています。一方、プロパンガスは自由料金制のため、ガス会社が独自に価格を設定できます。

都市ガスへの切り替えには初期費用がかかりますが、長期的に見れば数年で費用を回収できる可能性が高く、その後の生活では継続的にガス代の節約が見込めるはずです。

切り替えの必要条件:ご自宅は都市ガスの供給エリアか?

都市ガスへの切り替えは、大きな節約効果が期待できる一方で、誰でも無条件に実行できるわけではありません。具体的な手続きに進む前に、ご自身の状況が切り替えの「必要条件」を満たしているかを確認しましょう。

条件1:都市ガス供給エリア内であること

最も基本的な条件は、お住まいの建物が都市ガスの供給エリア内にあることです。具体的には、建物の前面道路の地下に都市ガスの「本管」が埋設されている必要があります。この確認は、日本ガス協会の「ガス事業者検索」や資源エネルギー庁の「登録ガス小売事業者一覧」から行えます。まずは、ご自身の家が都市ガスを引き込める場所にあるのかを必ず確認してください。

条件2:ガス導管の引き込み工事が可能であること

前面道路に本管が通っていても、そこからご自身の敷地内へガス管を引き込む工事が物理的、法的に可能でなければなりません。例えば、敷地が私道に面している場合、掘削工事を行うために私道の所有者全員からの承諾が必要になることがあります 。もし一人でも承諾が得られなければ、工事は実施できません。

また、特殊な立地条件(旗竿地のように公道から建物までの距離が極端に長い、あるいは高低差が大きいといった立地)では、工事が技術的に困難であったり、費用が想定を大幅に超えたりする可能性があります。

条件3:建物の所有権と許可

次に問われるのが、ガス設備の変更に関する権限です。持ち家(戸建て・分譲マンション)の場合は、建物の所有者であるため、切り替えの決定権はご自身にあります。一方、賃貸住宅(アパート・マンション)の場合、 ガス設備は大家さんや管理会社の所有であるため、入居者が独断で切り替えることは原則として不可能です。

特にアパート・マンションは建物全体でプロパンガス会社と一括契約していることがほとんどであり、変更には所有者の許可が必須となります。賃貸にお住まいの場合は、この時点で都市ガスへの切り替えは極めて困難であると認識する必要があります。

条件4:既存プロパンガスの契約条件

現在契約しているプロパンガス会社との契約内容も、切り替えの可否を左右する大きな要因です。特に注意すべきは「無償貸与契約」契約の存在です。 もしこの契約期間中(多くは10年〜15年)に解約する場合、ガス会社から設備費用の残債を高額な違約金として請求される可能性があります。

まずは手元の契約書を確認し、契約期間や違約金に関する条項を把握することが重要です。違約金の額によっては、切り替えのメリットが相殺されてしまう可能性も考慮しなければなりません。

これらの条件をすべてクリアして初めて、都市ガスへの切り替えが現実的な選択肢となります。

切り替え手続きから開通工事までの具体的な4ステップ

ご自宅が都市ガスの供給エリア内であれば、切り替えはガス代を根本的に安くするための最も確実な方法です。ここでは、その手順と費用、注意点について解説します。

都市ガスへの切り替えは、大きく分けて4つのステップで進行します。

STEP1:ご自宅が「都市ガス供給エリア」かを確認する

何よりもまず、お住まいの地域に都市ガスの本管が通っているかを確認する必要があります。エネピでは、都市ガスを提供しているガス会社の対応エリアを都道府県ごとにまとめて紹介しています。以下のリンクから、お住まいの都道府県を選んでご確認ください。
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STEP2:ガス会社へ見積もりを依頼・申し込む

供給エリア内であることが確認できたら、ガス会社に連絡し、切り替え工事費用の詳細な見積もりを依頼します。この見積もりには、道路に埋設されたガス本管から自宅敷地内への「引き込み工事」と、敷地内のガスメーターから各ガス機器までの「宅内配管工事」の費用が含まれます。提示された見積書の内容を細かく確認し、納得できれば正式に申し込み手続きを進めます。

STEP3:ガス配管工事の実施

申し込み後、ガス会社と工事日程を調整し、実際の配管工事が行われます。工事は主に、道路から敷地内のガスメーターまでガス管を引き込む作業と、ガスメーターから給湯器やコンロまで配管を接続する作業に分かれます。建物の状況にもよりますが、工事自体は1〜2日で完了するのが一般的です。ただし、工事内容によっては立ち会いが必要となります。

STEP4:開通作業とガス機器の交換

配管工事が完了すると、最終ステップとしてガスの開通作業が行われます。ガス会社の作業員が訪問し、ガスメーターの栓を開け、ガス漏れがないか、ガスが正常に流れるかを厳重にチェックします。 この開通作業に合わせて、プロパンガス用のガス機器(給湯器、ガスコンロなど)を、すべて都市ガス対応の新品に交換する必要があります。

切り替えにかかる「期間」と「費用」

ここで重要なのは、全体の所要期間です。工事自体は数日で終わりますが、申し込みから実際にガスが開通するまでには、通常1ヶ月から2ヶ月程度の時間を見込む必要があります。これは、道路の掘削許可を行政や警察へ申請する手続きに時間がかかるためです。すぐに切り替えられるわけではないことを念頭に置き、余裕を持った計画を立てることが肝心です。

また、都市ガスへの切り替えにおける最大の懸念点は初期費用でしょう。総額は個々の住宅の状況によって大きく変動しますが、一般的に戸建て住宅の場合、総額で25万円〜45万円程度が目安となります。その内訳を詳しく見ていきましょう。

費用の種類内容費用の目安備考・注意点
ガス本管引き込み工事費道路下のガス本管から敷地内のガスメーター設置位置までの配管工事。10万円~20万円前面道路から宅地までの距離が長い、旗竿地、私道に面しているなどの悪条件が重なると、費用は大幅に増加する可能性がある。
宅内配管工事費敷地内のガスメーターから、給湯器やコンロなど各ガス機器までの配管工事。(上記に含まれることが多い)ガス会社の標準的な見積もり例では、基本工事費、埋設管工事費、ガス栓ライン工事費などで構成される。
ガス機器購入・設置費都市ガス対応の給湯器やガスコンロなどの購入費用と設置工事費。15万円~25万円給湯器(エコジョーズ等)で20万円~、ビルトインコンロで7万円~が目安。機器のグレードによって大きく変動する。
プロパンガス契約の違約金「無償貸与契約」が残っている場合に発生する可能性のある解約金。0円~20万円以上最も注意すべき隠れコスト。契約内容を必ず事前に確認する必要がある。

特に注意が必要なのは、「ガス本管引き込み工事費」です。前面道路にガス本管が埋設されていない場合は、本管自体の延長工事が必要となり、費用が100万円を超えるケースも稀にあります。必ず事前にガス会社による現地調査と詳細な見積もりを取得してください。

【Q&A】切り替え前に解消したい不安や疑問

切り替えを具体的に進める前に、多くの方が抱える疑問点についてお答えします。これまでの内容と重複する部分もありますが、改めて確認していきましょう。

Q1. 賃貸住宅(アパート・マンション)でも切り替えはできる?

A. 入居者が個人で切り替えることは、原則として不可能です。ガス設備は建物の所有者である大家さんや管理会社の資産であるため、変更には所有者の許可が必須となります。集合住宅の場合、建物全体で一括してプロパンガス会社と契約していることがほとんどです。どうしても切り替えを希望する場合は、まず大家さんや管理会社に相談することから始まりますが、実現のハードルは非常に高いと認識しておくべきです。

Q2. 安全性や災害時の対応に違いは?

A. 安全対策については、どちらのガスも高度な安全基準が設けられています。都市ガスは空気より軽いため、万が一漏洩しても窓を開ければ拡散しやすい特性があります。一方プロパンガスは空気より重く、低い場所に溜まりやすい性質があります。どちらもガス漏れ警報器や、異常を検知してガスを自動遮断するマイコンメーターの設置が義務付けられており、安全性は確保されています。

災害時の復旧については、一長一短があります。プロパンガスは各戸にボンベが設置されているため、配送網が復旧すれば個別に素早く利用再開できるメリットがあります。対して都市ガスは、広範囲にわたる地下配管網全体の安全確認が必要なため、大規模な地震などの際には復旧に時間がかかる傾向があります。ただし、近年は配管の耐震化やブロックごとの迅速な復旧体制が強化されています。

Q3. 機器(給湯器・コンロ等)はそのまま使える?

A. 「今使っているガスコンロや給湯器は、そのまま使えないのか?」という疑問を持つ方は非常に多いですが、結論は「ほぼ全てのケースで、買い替えが必須」です。プロパンガスと都市ガスは、主成分や発熱量が異なるだけでなく、ガスを燃焼させるために必要な空気の量も違うため、機器内部のノズルや部品の仕様が根本的に異なります。

一部の機器では部品交換で対応できるという情報もありますが、それは極めて稀なケースであり、安全面や性能保証の観点からも推奨されません。切り替えの際には、ガス機器一式の買い替え費用を初期費用として予算に組み込んでおく必要があります。

プロパンガス会社の変更も有効な選択肢

「自宅が都市ガスの供給エリア外だった」「賃貸物件で大家の許可が得られなかった」このような場合でも、高いガス代を払い続ける必要は全くありません。都市ガスへの切り替えが不可能でも、家計の負担を大幅に軽減する選択肢があります。

プロパンガス会社の「乗り換え」という選択肢

多くのプロパンガス利用者が見落としている事実、それは「プロパンガス会社は消費者が自由に選べる」ということです。 現在契約しているガス会社の料金が高いと感じる場合、より良心的な料金設定の会社に「乗り換える」だけで、月々のガス代が数千円、年間では数万円単位で安くなるケースは決して珍しくありません。これは、都市ガスへの切り替えのような大規模な工事や高額な初期費用を伴わずに実現できる、効果的かつ手軽な節約術です。

より良い条件を見つける方法:比較サイト活用術

「乗り換えが良いのは分かったが、どの会社が安いのか分からない」という方も多いでしょう。そこで活用したいのが、プロパンガス料金の比較サービスです。

エネピでは、お住まいの郵便番号や世帯人数を入力するだけで、その地域で供給可能な複数のガス会社の料金プランを簡単に比較・検討することができます 。

エネピの料金比較サービスを利用するメリットは多岐にわたります。

  • 料金の透明化: 各社の基本料金や従量単価が明示されるため、不透明だった料金体系を比較できます。
  • 手続きのサポート: 面倒な解約や新規契約の手続きを代行・サポートいたします。
  • 不当値上げ防止保証: 乗り換え後に不当な値上げが行われないよう監視する、また値上げがあった場合に差額を返金する保証制度を設けています。

まずは一度、エネピの比較サイトでご自宅のガス料金が地域の適正価格と比べてどれだけ高いのかを診断してみてください。

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まとめ

ここまで、プロパンガス料金の構造から、都市ガスへの切り替え、そしてプロパンガス会社の乗り換えという選択肢までを詳しく解説してきました。最後に、ご自身の状況に最適な決断を下すための考え方を整理します。

比較項目① 都市ガスへの切り替え② プロパンガス会社の乗り換え③ 現状維持・交渉
最適な人供給エリア内の持ち家にお住まいで、長期的な居住を予定している方。供給エリア外、賃貸物件にお住まいの方。または初期費用をかけたくない方。契約期間が長く残っており、高額な違約金で乗り換えが困難な方。
初期費用高い(25万~45万円以上)低い~ゼロゼロ
月間節約額最大中程度低い~中程度
手間・時間多い(1~2ヶ月)少ない(最短1~2週間)最も少ない
最大のリスク想定外の工事費増加。投資回収前に転居する可能性。乗り換え後に再び値上げされる可能性(保証付きサービスで回避可)。高額な違約金。交渉が不調に終わり、高い料金が継続する。

こちらの表を参考に、最終的な決断を下してください。具体的には、以下のステップで行動を開始しましょう。

ガス会社の賢い選び方

1. 供給エリア確認: 自宅が都市ガス供給エリア内か、エネピのウェブサイトで確認する。
2. 相見積もり取得(都市ガス): 供給エリア内の場合、管轄のガス会社に連絡し、切り替え工事の詳細な見積もりを依頼する。
3. 相見積もり取得(プロパンガス): エネピの料金比較サービスを利用し、複数の会社から見積もりを取得する。
4. 総合的判断: 収集した情報(初期費用、月々の節約額、違約金など)を基に、ご自身の家庭にとって最も経済的な方法を選択する。

毎月のガス料金は、日々の生活に重くのしかかる固定費です。しかし、それは決して変えられないものではありません。正しい知識を身につけ、主体的に行動することで、その負担を大幅に軽減することが可能です。この記事が、あなたの賢い選択の一助となることを願っています。

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今村 一優の写真

エネルギー事業部責任者

今村 一優

新卒で太陽光発電事業を行うベンチャー企業に入社。商社部門の仲卸営業として、国内外の太陽光発電メーカーの商品を取り扱い、全国の販売施工会社を担当。その後、太陽光発電の一括見積もりサイト運営にも携わる。
2015年にはプロパンガス料金比較サービスenepi(エネピ)の立ち上げを行い、数万人のプロパンガス代削減のサポートをするサービスへ成長させる。
エネルギー領域で10年以上携わった経験と知識を活かして、じげんエネルギー事業のマネージャーにて事業開発を行なっている。

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ライター

藤巻 創

電気・プロパンガスに関する記事のライティングを担当。
制作ポリシーに基づいてエネルギー全般の記事作成・管理を行う。