経済産業省が、2019年10月からの消費税引き上げへの対策と、国内のキャッシュレス決済比率の推進のために発表した「キャッシュレス・事業者還元事業」。

これはどのような仕組みで、どのように補助の申請ができるのか。
また、プロパンガス業界にどのような影響があるのか。

事業概要とプロパンガス事業での活用方法の2つの観点で、「キャッシュレス・事業者還元事業」についての情報をまとめました。

キャッシュレス・消費者還元事業とはなにか?

事業の目的

なぜ経産省は「キャッシュレス・消費者還元事業」を実施するに至ったのか?

それは、下記の2つの目的からであると発表されています。

①国内のキャッシュレス決済比率の引き上げ
②2019年10月から始まる消費税の引き上げに伴った需要平準化対策

特に①については、2020年の東京五輪、2025年の大阪万博で訪日する外国人の決済状況改善のために急務とされており、現在20%前後であるキャッシュレス決済比率を2025年までに40%まで引き上げるという具体的目標が掲げられました。

要するに、今後国をあげてキャッシュレス決済を推進していくということですね。

事業内容

では、「キャッシュレス・消費者還元事業」は具体的にどのような内容なのか?
簡単にまとめると、下記の図のようになります。
事業内容
経済産業省『キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)の概要』より抜粋


【消費者のメリット】
・キャッシュレス決済対応店舗の増加
・補助対象の事業者からの商品の購入においてキャッシュレス決済を用いた場合、購入金額の5%がポイントまたは前払式支払手段にて還元される

【中小・小規模事業者のメリット】
・補助対象のキャッシュレス決済事業者へ支払う加盟店手数料が3.25%以下になるほか、その1/3の額について国から補助がおりる
・新たにキャッシュレス決済を導入する場合の端末導入費用が無料になる

【キャッシュレス決済事業者のメリット】
・加盟店の拡大
・キャッシュレス端末導入費用負担額の2/3の金額の補助が国から受けられる

事業の対象者

中小・小規模事業者の対象となる事業者は下記の要件を満たした業者となります。

事業の対象者

※1)旅館業は資本金5千万円以下又は従業員200人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下とする。
※2)資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有される中小・小規模事業者は補助の対象外とする。
※3)事業協同組合、商工組合等の中小企業団体、農業協同組合、消費生活協同組合等の各種組合は補助の対象とする。
※4)一般社団法人・財団法人、公益社団法人・財団法人、特定非営利活動法人は、その主たる業種に記載の中小・小規模事業者と同一の従業員 規模以下である場合、補助の対象とする。
※5)中小・小規模事業者の定義に該当する場合であっても、登録申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小・小 規模事業者は補助の対象外とする (租税特別措置法で本年4月から同様の措置が適用)


経済産業省『キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)の概要』より抜粋

 プロパンガス会社様については、卸売業または小売業の条件を満たしていれば補助対象ということですね。

 補助を利用すれば、プロパンガス会社様の負担なしでガス料金の5%を消費者に還元することができるほか、キャッシュレス決済事業者へ支払う加盟店手数料が3.25%以下かつその1/3に国から補助がおりる形になり、多くの会社様にとって今よりもお得になります。
 また、これまでキャッシュレス決済を導入していなかったガス会社様にとっては、端末導入費用ゼロ円でキャッシュレス決済をはじめられる絶好のチャンスと言えるでしょう。

 補助対象のキャッシュレス決済事業者については下記リンクで確認することができるほか、新たに探す場合には経産省の出しているコチラのページでサービス内容ごとに絞り込んで検索することができます。

実施のスケジュール

こちらの補助は無期限ではなく、2019年10月〜2020年6月の9ヶ月という明確な期限が定められています。

実施のスケジュール
経済産業省『キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)の概要』より抜粋

現在はいわゆる準備期間で、「キャッシュレス・消費者還元事業」への参加を受付している期間になります。

キャッシュレス決済事業者への加盟はもちろんのこと、すでになんらかのキャッシュレス決済を導入している場合でも、キャッシュレス決済事業者へ連絡し、「加盟店ID」を発行してもらわなければ補助がおりない可能性があるので、注意が必要です。

「できる限り早めの申請を!」と経産省からも喚起されているので、キャッシュレス決済の導入はもちろんのこと、「加盟店ID」の発行を終えていない会社様もお早めの確認をおすすめします。
キャッシュレス決済導入の審査・加盟店申請の受理については数週間から一月ほどの時間がかかるほか、直前には申込みの集中が予想されるため、10月1日からの消費者還元に間に合わない場合があります。

秋以降は各対象事業者にてPR合戦になり、同業者間の顧客の取り合いが起きる可能性が高いので、スタートダッシュを遅らせるわけにはいきませんよね。
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プロパンガス業界への影響

ちなみに、今回の「キャッシュレス・消費者還元事業」はプロパンガス業界にはどのような影響が有るのでしょうか?

大きくは、①補助対象外のガス会社から補助対象のガス会社さんへの顧客の移動、②プロパンガス会社内のキャッシュレス対応率の向上の2つの影響があると考えられます。

補助対象外のガス会社様から、補助対象のガス会社様への顧客の移動


先述の通り、「キャッシュレス・消費者還元事業」の対象の事業者にてキャッシュレス決済を行った消費者には無条件で5%の還元が出ます。
そのため、プロパンガスなどの他社との差別化の難しい分野においては、5%還元がされない業者からの購入を、5%還元がされる業者からの購入に切り替える消費者が急増するのは、想像に難くないかと思います。

補助対象外のガス会社様にとっては、新規獲得・自社顧客の囲い込みのどちらにおいても不利な状況が生まれるのは間違いありません。

プロパンガス会社内のキャッシュレス対応率の向上

プロパンガス会社内のキャッシュレス対応率の向上
今回の補助を受けて、「今まで現金払いのみだったけれど、この機会にキャッシュレス決済を導入しよう」と考えるガス会社様はおそらく多いかと思います。
国をあげてのキャッシュレス決済比率向上の推進がなされていく今後、現金払いの風潮の根強かったプロパンガス業界においてもキャッシュレス決済が主流になる時期はそう遠くないかもしれません。

そうなった時に決済方法の面で他社に遅れを取らないためにも、早い段階での現金払いからの脱却が必要です。

補助を活用する場合の注意点


今回のお得な補助ですが、ひとつだけ注意点があります。
それは、実施期間が2019年10月〜2020年6月の期間限定であることです。

2020年7月以降の加盟店手数料の割引・消費者への還元はいずれもキャッシュレス決済事業者の負担になるので、キャッシュレス決済事業者によっては加盟店手数料が補助開始前の基準に戻り、消費者還元もなくなる可能性があります。

「キャッシュレス・消費者還元事業」を利用する場合には、必ずキャッシュレス決済事業者に補助終了後の対応についても確認しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

2020年6月までの期間限定ではありますが、キャッシュレス未導入の会社様・キャッシュレス導入済みの会社様のどちらにもメリットが有るこの補助を活用しない手はありませんよね。

ぜひお得なこの機会にキャッシュレス決済を導入して、他社との差別化を図り、効率的な新規顧客開拓と自社顧客の定着を押し進めていきましょう!

参考:『キャッシュレス・消費者還元事業』公式サイト

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エネルギー事業部責任者

今村 一優

新卒で太陽光発電事業を行うベンチャー企業に入社。商社部門の仲卸営業として、国内外の太陽光発電メーカーの商品を取り扱い、全国の販売施工会社を担当。その後、太陽光発電の一括見積もりサイト運営にも携わる。
2015年にはプロパンガス料金比較サービスenepi(エネピ)の立ち上げを行い、数万人のプロパンガス代削減のサポートをするサービスへ成長させる。
エネルギー領域で10年以上携わった経験と知識を活かして、じげんエネルギー事業のマネージャーにて事業開発を行なっている。

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ライター

藤巻 創

電気・プロパンガスに関する記事のライティングを担当。
制作ポリシーに基づいてエネルギー全般の記事作成・管理を行う。