高圧ガスとは?
街中で「高圧ガス」という文字が書かれたステッカーを貼っている車を見たことがある人も多いと思いますが、
一体どのようなガスを取り扱っているのでしょうか。
プロパンガスや都市ガスなど私たちの生活に身近なガスは聞き覚えもあると思いますが、
高圧ガスというものが何なのかご紹介していきたいと思います。
①定義
一般には大気圧より高いガスを
『高圧ガス』といいますが、
高圧ガス保安法では、
常温で1MPa以上または35℃以上で1MPaとなる圧縮ガス(アセチレンガス除く)、
加圧冷却して液状にし
常温で0・2MPa以上または35℃以上で0・2MPaとなる液化ガスを指します。
その他アセチレンガスと政令で指定されたガスも含みます。
②種類
I類(可燃性ガス・酸素)、Ⅱ類(毒性ガス)、Ⅲ類(LPガス)、Ⅳ類(特殊高圧ガス)があります。
③危険性
高圧ガスボンベは火炎にさらされると、
内部圧力が上昇して爆発するおそれがあり、
可燃性ガスは漏えいによる
爆発・火災の危険性もあります。
ボンベに強い衝撃を
与えることによる爆発もあり得ます。
水素やプロパンガス(LPガス)、
アセチレンは可燃性が高く、
酸素は支燃性があるので
わずかな火気で激しく爆発します。
また、窒素や炭酸ガスは
漏えい・充満により、
CO中毒などの酸欠状態を引き起こします。
「高圧ガス保安法」とは?
高圧ガスは、
産業活動において広く利用され、
その取扱いを誤った場合、
事業所のみならず、周辺地域に
多大なる被害をもたらす恐れがある為、
高圧ガスによる災害を防止し、
公共の安全を確保することを
目的として、高圧ガス保安法を制定しています。
目的を達成する為に、
①高圧ガスを取り扱う者に対して行政による許可、検査等の規制を行うこと
②民間事業者や高圧ガス保安協会の自主的な保安に係る活動を促進することを行っています。
規制については、高圧ガスの
製造、貯蔵、販売、移動、輸入、消費、廃棄並びに、
容器の製造及び取扱いの全般に渡っております。
規制内容は、
①施設、設備に対する基準の適合
②有資格者の配置が中心となっています
また、保安活動の促進については、
事業者が自らの判断と決定に基づき実施し、
活動内容は
①保安教育
②保安検査
③事業者の保安体制に関する規定の整備が中心となっています。
①法令
高圧ガスの
・製造
・貯蔵
・輸入
・移動
・消費
・廃棄 などについて定め規制した法律です。
大正11年に圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法として
公布されたのが嚆矢で、
昭和26年の高圧ガス取締法への改組を経て
平成8年に制定されました。
前法と異なるのは、
事業者や消費者自身が保安を確保する
自主保安を骨子としている点です。
②保安法の適用除外になる場合
高圧ガスボイラーや
導管内の蒸気、輸送機器機関内で
使われるガス類、鉱山用ガス、
電機機器内部で使われるガス類などです。
また、政令で定める適用除外として、
「圧縮装置内で35℃時に5MPa以下の空気」
「液化ガス以外との混合物で液化ガスの割合が質量の15%以下、35℃時0・6MPa以下のガス=ビール、清涼飲料水など)」
「内容積1L以下の容器内にあり35℃時0・8MPa以下のガス=カセットコンロ用カートリッジなど」
などがあります。
③届出
高圧ガスを製造・貯蔵するには許可、
販売するには届出、輸入するには
申請が必要です。
一定量以上消費する時も
届出が必要となります。
開始時だけでなく場所の変更、
廃止なども届出なければなりません。
所管官庁は経済産業省ですが、
手続きは都道府県が行政事務を
代行しています。
④高圧ガス業者
製造事業者、販売事業者、輸入事業者、消費事業者があり、
貯蔵だけを行う事業者はほとんどいません。
(製造・販売の付帯行為として貯蔵があるため)
⑤高圧ガスを取り扱う業種
一般高圧ガスやプロパンガス(LPガス)が
代表的ですが、半導体製造などに使う
特殊ガス、医療用ガスなども含め
製造・販売(ケースにより消費)の
各事業者が存在します。
高圧ガス保安法の適用範囲という意味では、
石油化学コンビナートや
冷凍装置を使った事業者
(冷蔵倉庫事業者など)も含みます。
⑥高圧ガス製造保安責任者について
1.甲種化学
2.甲種機械
3.乙種化学
4.乙種機械
5.丙種化学(液化石油ガス)
6.丙種化学(特別)
7.第一種冷凍機械
8.第二種冷凍機械
9.第三種冷凍機械
以上、9種があります。
⑦免状の種類と資格
■甲種化学・甲種機械
石油化学コンビナートなどの
高圧ガス製造事業所で、
製造に係る保安統括業務を行うために必要な資格です。
ガス種類・製造施設規模は制限がなく、
全ての製造施設に関する保安に携わることができます。
■乙種化学・乙種機械
石油化学コンビナートなどの
高圧ガス製造事業所で、
製造に係る保安統括または
実務を行う方に必要な資格です。
ガス種の制限はありませんが、
施設規模には職務によって一定の制限があります。
■丙種化学(液化石油ガス)
LPガス充てん所やLPガススタンドなど
LPガス製造事業所で保安統括または
実務を行うために必要です。
施設規模により職務によって一定の制限があります。
■丙種化学(特別試験科目)
石油化学コンビナートや充てん所、
CNGスタンドで、製造保安の
実務を行うために必要な資格です。
ガス種や施設規模の制限はありませんが、
職務は保安係員のみに限定されます。
■第一種冷凍機械
大型冷凍空調機器を備えている施設や
冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場などで
保安実務を含む統括業務を
行うために必要な資格です。
ガス種や施設に関する制限はありません。
■第二種冷凍機械
中型冷凍空調機器を備えている施設や
冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場などで、
保安実務を含む統括業務を行うために必要な資格です。
1日の冷凍能力が300t未満の製造施設が対象です。
■第三種冷凍機械
小型冷凍空調機器を備えている施設や
冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場などで、
保安実務を含む統括業務を行うために必要な資格です。
1日の冷凍能力が100t未満の製造施設が対象です。
高圧ガス販売主任者について
第一種販売主任者と
第二種販売主任者があります。
第一種販売主任者は、
プロパンガス(LPガス)以外の
高圧ガス販売事業所で
保安実務を含む統括業務を
行うためにに必要な資格です。
第二種販売主任者は、
プロパンガス(LPガス)販売事業所において
保安実務を含む統括業務を
行うために必要な資格で、
販売先は一般家庭用・工業用の
どちらでも構いません。
参考URL
http://www9.plala.or.jp/hiyotrio/newpage042.htm
http://www.research.kobe-u.ac.jp/eng-photonics/labo/guard/gas_treat.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%9C%A7%E3%82%AC%E3%82%B9%E4%BF%9D%E5%AE%89%E6%B3%95
https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/safety/index.html
http://www.khk.or.jp/
車に貼られている「高圧ガス」ステッカーにはどんな意味がある?
高圧ガスステッカーは、
警戒標といい、蛍光色の黄色による
「高圧ガス」の文字が書かれたシールです。
警戒標は、公道及びそれに類する場所に
高圧ガスを積載して移動する際には、
周囲への注意喚起として、
高圧ガスを積載している危険性を
知らせる意味を持っており、
安全を確保する為に、
高圧ガスの移動車両に貼っています。
高圧ガスステッカーは、
高圧ガス保安法の第二十三条、第1項に、
「高圧ガスを移動するには、その容器について、経済産業省令で定める保安上必要な措置を講じなければならないこと、
並びに第2項の車両(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第一項に規定する道路運送車両をいう。)により
高圧ガスを移動するには、その積載方法及び移動方法について経済産業省令で定める技術上の基準に従ってしなければならない。」
と定められており、
法律に則って貼ることが義務付けられています。
【毒性ガスの積載と21L以上40L以下の容量なら不要】
但し、この警戒標はトラック等により
移動する毒性ガス以外のガスで、
容器の内容積が20L以下である
充てん容器等のみを積載した車両であって、
当該積載容器の内容積の合計が40L以下である場合は、
法令上不要です。
【ステッカーが適用される車種の場合】
法令が適用となる場合は、
高圧ガスを移動する車両の前方および
後方から明瞭に見える場所に掲げる必要があります。
タンクローリー、大型トラックなどの
大型車両:車両の前部および後部の見易い場所に貼ります。
ミニバン、ワゴンなどの
小型車両:両面標示のものを
運転台の屋根の付近の見易い場所に掲げます。
【ステッカーの大きさは決まっている?】
警戒標は、横寸法を車幅の30%以上、
縦寸法を横寸法の20%以上の長方形とし、
黒地の金属板にJIS K 5673「安全色彩蛍光塗料」の
蛍光黄による文字で「高圧ガス」と
記載したものを標準とします。
但し、正方形または、
正方形に近い形状のものを用いる場合には、
その面積を600㎠以上とすることとなっています。
「固定積みの場合」
固定積みの場合は、
(1)警戒標の掲示
(2)一般複合容器等は、刻印等の年月から15年を経過したものは使用禁止
(3)容器の温度は40度以下に保つこと
(4)液面揺動防止の防波板の設置
(5)高さ検知棒の設置
(6)容器元弁、緊急遮断弁等の損傷防止
(7)ガラス液面計は使用不可
(8)バルブ等の開閉方向の識別表示をすること
(9)移動の開始時及び終了時の異常の有無の点検
(10)可燃性ガス(液化石油ガスを含む)
又は酸素を移動する場合は、
消火設備、防災資材、工具等を携行すること
(11)毒性ガスを移動する場合は、緊急用具を携行すること
(12)駐車する場合、第一種及び第二種保安物件の密集地を避け、
交通量が少ない安全な場所を選ぶこと、移動監視者又は運転者は、
やむを得ない場合を除き、車両を離れないこと
(13)特殊高圧ガスを移動する場合、
移動監視者を同乗させること、
長距離の運転は2名で行うこと等
(14)可燃性ガス、毒性ガス又は
酸素の高圧ガスを移動する場合、
高圧ガスの名称、性状及び移動中の
災害防止の為に必要な注意事項を
記載した書面を運転者に携帯させ
順守させること等が定められています。
「バラ積みの場合」
バラ積みの場合は、
(1)警戒標の掲示
(2)一般複合容器等は、刻印等の年月から15年を経過したものは使用禁止
(3)容器の温度は40度以下に保つこと
(4)突出したバルブのある液化石油ガスの充てん容器等には、
固定式プロテクター又はキャップを施すこと
(5)容器の転落、転倒防止措置、バルブの損傷防止措置、粗暴な取り扱いの禁止
(6)混載の禁止
(充てん容器等と消防法危険物、塩素の充てん容器等とアセチレン、アンモニア、水素の充てん容器等)
(7)可燃性ガス(液化石油ガスを含む)及び酸素の充てん容器等を同一車両で移動する時は、
これらの充てん容器等のバルブが相互に向き合わないようにすること
(8)毒性ガスの充てん容器等には木枠又はパッキンを施すこと
(9)可燃性ガス(液化石油ガスを含む)又は酸素の充てん容器等車両により移動する場合は、
消火設備、防災資材、工具等を携行すること
(10)毒性ガスの充てん容器等を移動する場合は、緊急用具を携行すること
(11)除害の措置を講ずること(アルシンまたはセレン化水素)
(12)駐車する場合、第一種及び第二種保安物件の密集地を避け、
交通量が少ない安全な場所を選ぶこと、移動監視者又は運転者は、やむを得ない場合を除き、車両を離れないこと
(13)特殊高圧ガスを移動する場合、移動監視者を同乗させること、長距離の運転は2名で行うこと等
(14)可燃性ガス、毒性ガス又は酸素の高圧ガスを移動する場合、
高圧ガスの名称、性状及び移動中の災害防止の為に必要な注意事項を記載した書面を運転者に携帯させ順守させること等が定められています。
ステッカーの記載の仕方に違いがあるのには理由がある?
横書きの警戒標は、
横寸法を車幅の30%以上、
縦寸法を横寸法の20%以上の長方形とし、
黒地の金属板に
JIS K 5673「安全色彩蛍光塗料」の
蛍光黄による文字で「高圧ガス」と
記載したものを標準とすることが
一般高圧ガス保安規則関係例示基準
「1.境界線・警戒標等標識」4.2によって定められています。
ステッカー、マグネット、スチール製片面又は、両面表示があり、
大きさは大(150×750mm)、中(120×600mm)、小(110×510mm)等があります。
正方形に2段になって書かれている形状の警戒標は、
そのステッカーの面積を600㎠以上とすることが
一般高圧ガス保安規則関係例示基準
「1.境界線・警戒標等標識」4.2によって定められています。
誰でも「高圧ガス」を乗せた車を運転できる?
高圧ガスを積載した車両を運転する場合は、
一般高圧ガス保安規則第49条及び
50条に規定された量の高圧ガスを移動する場合に、
甲種化学責任者免状、
乙種化学責任者免状、
丙種化学責任者免状、
甲種機械責任者免状若しくは、
乙種機械責任者免状の交付を受けている者、
又は高圧ガス保安協会の
高圧ガス移動監視者講習の検定に
合格した者の同乗が必要になり、
その者が高圧ガスの移動について
監視しなければなりません。
一般ガスの場合
一般ガスとは、
一般高圧ガス保安規則第一条の
適用範囲にあるガスのことで、
一般ガスの場合は、
(圧縮ガスの中でも特殊高圧ガスを除く)移動の方法が
「タンクローリー」、
「トラック等によるバラ積み」のいずれの場合も、
容積300立方メートル以上の可燃性ガス及び酸素、
容積100立方メートル以上の毒性ガス(液化ガス(特殊高圧ガスを除く)、
高圧ガス移動監視者の
有資格者の同乗が必要になり、
その者が高圧ガスの移動について
監視しなければなりません。
特殊高圧ガスの場合
特殊高圧ガスとは、
一般高圧ガス保安規則第二条第3号で
定義する特殊高圧ガス7種類のことを指します。
特殊高圧ガスの場合は、
移動の方法が「タンクローリー」、
「トラック等によるバラ積み」の
いずれの場合も、数量に関係なく、
高圧ガス移動監視者の有資格者の同乗が必要になり、
その者が高圧ガスの移動について
監視しなければなりません。
特殊高圧ガス7種類とは、
アルシン、ジシラン、ジボラン、セレン化水素、ホスフィン、モノゲルマン及びモノシランのことです。
液化石油ガスの場合
液化石油ガスとは、
プロパン、ブタンを主成分とし、
圧縮することにより、
常温で液化できる燃料のことです。
液化石油ガスの場合は、
(液化ガスの中でも特殊高圧ガスを除く)液化石油ガス保安規則第48条及び第49条により、
移動の方法が「タンクローリー」、
「トラック等によるバラ積み」の
いずれの場合も、
質量3000キログラム以上の可燃性ガス及び酸素、
質量1000キログラム以上の毒性ガスの高圧ガス並びに
一般高圧ガス保安規則第七条の三、
第二項の圧縮水素スタンドの
液化水素の貯槽に充てんする
液化水素の液化石油ガスを移動する場合は、
有資格者の同乗が必要になり、
その者が高圧ガスの移動について
監視しなければなりません。
高圧ガス保安活動促進週間というものがある
実施期間は毎年10月23日~29日と定められています。
高圧ガス保安活動促進週間って?
では、実際にどのような内容の活動が行われているのでしょうか。
具体的な活動内容
また、業務用の液化石油ガス消費者や一般のLPガス消費者に対しては、
実施期間
平成28年度の実施期間は10月23日(日)~29日(土)までとなっています。
この期間中に、全国各地で防災訓練や、功労者の表彰・講演会などが行われます。
保安活動に貢献した事業者等は表彰される!
下記のような形で高圧ガス保安活動に貢献した事業所や個人は、
また、学識や経験が豊富で、事業所での管理技術や教育の面で優秀であり、
2015年に表彰された事業所等
●優良製造所(7件)
・有限会社赤木プロパン商会(広島)
・株式会社大野石油店基町LPGスタンド(広島)
・高圧ガス工業株式会社 名古屋工場(愛知)
・高圧ガス工業株式会社 浜松工場(静岡)
・サカヰ産業株式会社 富山総合ガスセンター(富山)
・株式会社サン・ペトロケミカル 鹿島工場(茨城)
・三菱化学株式会社 水島事業所(岡山)
●優良販売業者(12件)
・有限会社上野石油ガス(山口)
・小野口商事株式会社(栃木)
・株式会社世田谷酸素商事(東京)
・第一エネルギー設備株式会社(関東監督部)
・株式会社高松溶材社(香川)
・有限会社ツジイケ(石川)
・株式会社特殊ガス商会(山口)
・株式会社巴商会 伊勢原営業所(神奈川県)
・株式会社福島石油(島根)
・藤森工業株式会社(富山)
・有限会社丸徳ガス産業(沖縄)
・株式会社渡辺酸素(宮城)
この他、15名の保安功労者が表彰を受けています。
まとめ
クーラーや冷蔵庫を冷やすための冷媒としてのガス、医療用の酸素や麻酔などのガス、
タクシーなどの乗り物に使われる燃料としてのガス、
スキューバダイビングなどに使う圧縮されたボンベのガスなど、
いろいろなところで高圧ガスが使われています。
車両に警戒標識を掲げたり、移動車両に固定及びバラ積みの場合のそれぞれの規則を遵守したり、
高圧ガスを移動する際に、ガスの種類や数量によって基準が定められており、
高圧ガス移動監視者を同乗させる等、遵守しなければならないことが多岐に渡ります。
規則の遵守は、高圧ガス保安法の目的である高圧ガスによる災害を防止して、
公共の安全を確保することを達成する為にあります。
法令で定められている基準に基づいて、必要な措置を講じ、
これらを守ると共に、緊急時の措置等について十分な知識を持つ事が保安上非常に大切な事です。
取り扱っている事業所などでは一歩間違えると重大な事故にも繋がりかねません。
このような保安活動促進週間を毎年度設け、
そのたびごとに保安意識を高め、環境を見直し、安全を徹底・努力し続けていくことが何よりも大切なことなのです。