20164月から始まる電力自由化に向けて、さまざまな業界からの新規参入や既存の電力会社との事業提携が活発になっています。今回はそのなかでもNTTドコモ(docomo)・KDDIau)・ソフトバンク(Softbank)の通信キャリア3社の動向に注目したいと思います。

各社ともこれまでに展開してきた電力関連事業を強化するとともに、今年の9月から10月にかけて相次いで大手電力会社との提携を明らかにしています。各社の現在(201511月)までの動向と、今後の戦略について解説していきます。

NTTドコモ(docomo)

NTTドコモのプロフィール

NTTドコモは、契約数では国内シェア第1位となる6,849万件(2015年9月)と圧倒的な顧客基盤を持っています。2015年3月に「ドコモ光」という家庭用インターネット回線と携帯電話の通信料金とのセット割引を提供開始し、同年10月末までに累計申込数は90万件を突破しています。映像配信サービス「ひかりTV」とのセット割引も展開しています。これらのサービス展開の拠点となるドコモショップは約2,400店舗あります。


利用者からの支持も高く、「携帯電話サービス顧客満足度No.1」を受賞しています(J.D.パワー アジア・パシフィック2015年日本携帯電話サービス顧客満足度調査)。

これまでに展開してきた電力関連事業の動向

エネット

エネットは、2000年7月にNTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスにより設立された特定規模電気事業者です。すでに全国の1万9,000件を超える需要家に電気を供給しており、特定規模電気事業者47社中のシェア約50%を占めています(2013年度)。エネットが取り扱う電気は全国150か所以上の発電所から供給されており、電力安定供給という観点からも特定規模電気事業者のなかでもずば抜けています。


さらに、電源の燃料別構成の4分の3を天然ガスと再生可能エネルギーが占めており、クリーンな電気を取り扱っているといえます。

現在は、電力自由化の対象となっている特別高圧・高圧(受電電圧6,000V以上)の需要家が対象となっており、家庭用にはその条件に該当するマンションにのみ供給しています。


なお、2016年より特定規模電気事業者という区分けは廃止されますが、小売電気事業者として申請を通過しているため、2016年4月移行は、家庭用の電力小売事業に参入すると見込まれています。

エコめがね

エコめがねは、2011年11月にNTT西日本とオムロンが共同で立ち上げた太陽光発電の遠隔見守りサービスです。太陽光発電販売会社が遠隔で監視をすることにより、太陽光パネル利用者はインターネットを使っていつでもどこでも発電量を確認できるようになります。


このような日々の見守りに加えて、1か月に一度、太陽光パネルの発電状況がレポートとして届くので、もし発電状況に故障や異常が生じたとしても簡単に確認することができます。家庭用・産業用を合わせて、すでに300メガワット以上の太陽光発電に導入されており、さらに「ソーラーアワード2013」と「ASP・SaaS・クラウドアワード2014」を受賞しており、専門家からの評価も高いサービスです。

今後の戦略と電力会社との事業提携

今後の戦略と電力会社との事業提携
2015年11月11日、NTTドコモは、月々の携帯電話利用料金に応じて貯まる「ドコモポイント」を発展させた新たなポイントサービス「dポイント」を12月から開始すると発表しました。このdポイントはドコモの利用者はもちろん、利用者でなくても貯まるという点がドコモポイントとの大きな違いとなります。dポイントは携帯電話利用料金に加え、「dポイント加盟店」などでの専用ポイントカードの提示などにより貯まります。


さらに、クレジットカード機能のついた「dカード」を使えば世界中のVisa/MasterCard加盟店などでもお得にポイントを貯めることができます。貯まったdポイントはdポイント加盟店などで買い物をする際にも利用でき、ドコモの回線の利用者であればドコモの商品購入や毎月の携帯電話利用料金への充当にも利用できます。


さて、dポイントに関するプレスリリース発表に先立つ2015年9月29日、中部電力はNTTドコモを含むパートナー企業と提携した「電力自由化に向けた新たな取り組み」を発表しました。このなかで、電気料金に充当できる「カテエネポイント」交換の提携先企業を拡充し、そのうちの1社がNTTドコモであることを明らかにしています。つまり、カテエネポイントはdポイントへの交換が可能となったのです。

さらに、dポイントに関するプレスリリースのなかで、中部電力がdポイントをお得に貯められる「dポイント特約店」に加わることが発表されています。すなわち、NTTドコモと中部電力のサービスを両方使うと、相乗効果でdポイントを貯めやすくなるのです。

KDDI(au)

KDDI(au)のプロフィール

KDDI(au)は、契約数ではNTTドコモに次ぐ約4,464万件(2015年9月時点)となっています。他2社よりもずいぶんと早い、2012年3月にケーブルテレビや家庭用インターネット回線と携帯電話の通信料金とのセット割引「auスマートバリュー」を提供開始しました。auスマートバリューは、auスマートフォン契約者の50%、auひかり契約者の60%にまで浸透しています(2014年度末時点)。これらのサービス展開の拠点となるauショップは約2,500店舗あります。


NTTドコモと僅差で「携帯電話サービス顧客満足度No.2」を受賞していることからも、人気の高さがうかがえます。

これまでに展開してきた電力関連事業の動向

ジュピターテレコム

ジュピターテレコムは、1995年1月に設立されたKDDIと住友商事が出資するケーブルテレビの運営会社です(ブランド名は、J:COM)。ジュピターテレコムは2012年12月にマンション向け電力提供サービス「J:COM電力」を開始し、マンション一括受電サービスに進出しました。


マンション一括受電サービスとは、ジュピターテレコムが発電事業者より一括購入した電力をマンションに配電することを指し、これによって地域電力会社から買うよりも電気料金を抑えることができます。ジュピターテレコムが提供するテレビやインターネットサービスと一緒に使えば、さらに割引を受けることができます。送配電網は既存の電力会社のものを利用するため、電気の品質も信頼性も変わりません。


また、MEMS(マンション エネルギーマネジメントシステム、通称「メムス」と呼びます)と呼ばれるマンション向けエネルギー管理支援サービスを活用することで、マンション全体で最大10%程度の節電効果が期待できる「スマートマンション」化を推進しています。

auエナジーサプライ

auエナジーサプライは、2016年の電力小売全面自由化に向けて、2014年9月にKDDIが独自に始めたマンション一括受電サービスです。J:COM電力と同様に、KDDIが一括購入した電力をマンションに配電することで電気料金を抑えることができます。


今後は生活導線におけるWi-Fiの充実、スマートフォンやクラウドと連携した便利なサービスの提供など、KDDIならではのお得で便利なサービスを展開するとしています。

今後の戦略と電力会社との事業提携

今後の戦略と電力会社との事業提携
2015年10月20日、KDDIはauの電気サービス「auでんき」を2016年春から展開することを発表しました。auでんきは、全国(沖縄県・一部離島を除く)でさまざまな電気事業者から集めた電力を各地域の既存の送電網を活用して供給する電力小売事業となる予定です。


電力の安定供給についてはそのままに、携帯電話の通信料金とのセット割引が提供される予定です。さらに、スマートフォンを活用したお得で便利なサービスの提供も予定されています。auがすでに展開している「auスマートバリュー」と電力料金とのセット割引が展開されるかどうかは現時点では不明ですが、将来的にはその展開が期待されます。


実は、このプレスリリースに先立つ2015年6月に、KDDIと関西電力が電力小売事業で提携交渉を進めているとの報道がありました。この時点では、関西電力はKDDIと組んで首都圏に進出し、電気と通信の割安なセット販売を展開するとされていました。今回発表されたauでんきでは関西電力との提携については一切触れられておらず、関西電力側もKDDIとの提携については認めていません。したがって、auでんきにおける関西電力の関与は、今のところ明らかになっていません。
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ソフトバンク(Softbank)

ソフトバンクのプロフィール

ソフトバンクは、契約数では約3,976万件(2015年9月時点)と他2社の後塵を拝していますが、アメリカ最大規模の携帯電話・通信事業者「スプリント」を通じて米国での事業を展開したり、ヤフージャパンを通じてインターネット上の広告やイーコマースなどの事業を展開したり、さらに注目の映像配信サービスNETFLIXとの独占的提携をおこなったりと、さまざまなサービスを矢継ぎ早にリリースしていることに注目が集まっています。


2015年3月に「ソフトバンク光」という家庭用インターネット回線と携帯電話の通信料金とのセット割引「スマート値引き」を提供開始し、2015年10月時点で累計申込み数は71万件に達しています。これらのサービス展開の拠点となるソフトバンクショップは約2,600店舗あります。

顧客満足度では他2社に水をあけられてしまっていますが、「法人向けネットワークサービス(大企業市場セグメント)No.1」「クラウドサービス(通信事業者セグメント)No.1」を受賞しています(J.D.パワー アジア・パシフィック2015年日本携帯電話サービス顧客満足度調査)。

ソフトバンク(Softbank)がこれまでに展開してきた電力関連事業の動向

SBエナジー

SBエナジーは、2011年11月にソフトバンクが設立した太陽光や風力などの自然エネルギー発電事業を主とする会社です。現在は全国各地の太陽光や風力を中心とした発電設備を建設・運営しており、バイオマス、水力、地熱などの自然エネルギーを利用した発電設備についても事業開発を行っています。

SBパワー

SBパワーは、2012年8月にソフトバンクが設立した特定規模電気事業者で、電力小売事業と低圧電力買取事業に取り組んでいます。現在は、電力自由化の対象となっている特別高圧・高圧(受電電圧6,000V以上)の需要家を対象に「安心・安定かつ経済的な電気」を供給しています。


電力調達先のひとつに、主に再生可能エネルギーの発電事業を行っているSBエナジーがあり、その他の火力発電などの発電事業者からの調達と合わせて安価に安定供給を実現しています。なお、SBパワーは、SBエナジーの100%子会社です。

今後の戦略と電力会社との事業提携

今後の戦略と電力会社との事業提携
2015年10月7日、ソフトバンクは東京電力と業務提携をおこない、電力と通信・インターネットサービスの共同商品販売および新サービス開発を共同でおこなっていくことを発表しました。気になる業務提携の内容ですが、全国のソフトバンクショップや東京電力が新設する予定の家庭向け無料会員サイトなどを通じ、電力と携帯電話や光回線による通信・インターネットサービスの共同商品を全国規模で提供することが明らかになっています。さらに、「あんしん・あんぜん・おとく」に役立つ新サービスの企画・開発を共同で行っていく予定とされています。


東京電力は、日本瓦斯、TOKAIホールディングス、リクルートホールディングス、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、ロイヤリティマーケティングといった各業界を代表する企業との提携を発表していますが、このなかでもソフトバンクとの提携は柱とされているようです。東京電力にとっては、ソフトバンクとの提携を自社の供給エリア外の大都市圏での顧客獲得に活用することを、ソフトバンクにとっては、東京電力との提携を携帯電話やインターネット回線の販促に活用することが期待されています。

まとめ

これまで見てきたように、NTTドコモ(docomo)・KDDI(au)・ソフトバンク(Softbank)は3社とも映像配信サービス(またはケーブルテレビ)と家庭用インターネット回線、そして携帯電話の通信料金とのセット割引を展開していますが、これは電力小売全面自由化を見据えた布石だと言えます。


各社とも特定規模電気事業やマンション一括受電サービスを通じた電力供給事業を積極的に展開しており、電力小売全面自由化後はこれらの事業を、一般家庭を中心とする低圧需要家にも展開することは、ほぼ間違いないでしょう。その際に、競合他社との差別化のために、携帯電話の通信料金などとのセット割引をいっそう強化して、既存の顧客ネットワークへのアピールを図ると思われます。


3社とも既存のセット割引によってすでに顧客の囲い込みを始めていると言えますが、実際に電力小売全面自由化が始まると、これら3社以外の電気事業者との競争も強まることが予想されます。しかし、圧倒的な知名度と膨大な顧客ネットワークを全国的に持つ通信キャリアと、供給の安定性と実績を誇る既存の電力会社の組み合わせは優位に働くことが見込まれます。


いわば、電気をめぐる「戦国時代」の幕開けとなりますが、わたしたちの生活にとっても身近な通信キャリアがどのようにして電力自由化を攻略していくのか、そして私たち電気の需要家にとってどのようなお得なサービスが提供されるのか、注目していきたいですね。

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エネルギー事業部責任者

今村 一優

新卒で太陽光発電事業を行うベンチャー企業に入社。商社部門の仲卸営業として、国内外の太陽光発電メーカーの商品を取り扱い、全国の販売施工会社を担当。その後、太陽光発電の一括見積もりサイト運営にも携わる。
2015年にはプロパンガス料金比較サービスenepi(エネピ)の立ち上げを行い、数万人のプロパンガス代削減のサポートをするサービスへ成長させる。
エネルギー領域で10年以上携わった経験と知識を活かして、じげんエネルギー事業のマネージャーにて事業開発を行なっている。

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ライター

藤巻 創

電気・プロパンガスに関する記事のライティングを担当。
制作ポリシーに基づいてエネルギー全般の記事作成・管理を行う。